43【文学読書】

読書 スペインを追われたユダヤ人

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かつてスペインは、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒という「一神教三兄弟」の混在する土地だった

キリスト教の極端な宗教的非寛容は、15世紀には、先鋭化、制度化されて、異端裁判(異端審問)が始まる

「洗礼(改宗)か、死(火あぶり)か」の決断を、ユダヤ教徒は迫られる

多くのユダヤ教徒が、キリスト教への改宗を選択し、マラーノ(豚)と呼ばれるようになる

改宗した後もマラーノには差別と弾圧があり、心の中はキリスト教とユダヤ教に引き裂かれる

異端裁判官は「正義の人」として、神の名のもとに何らの罪悪感もためらいもなく、何万人もの異端者を生きながらに、火あぶりの刑に処した

やがて死の恐怖は、改宗したマラーノにも迫り、ポルトガルへ、さらにイベリア半島の外へと、逃避と流浪の旅が続く

キリスト教の残忍な異端裁判制度は、その後300年以上、つい最近まで続いていた

本書は、そのようなマラーノたちの足跡をたどる旅日記風に書かれている

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スペインの異端裁判官(大審問官)

枢機卿フェルナンド・ニーノ・デ・ゲバラ

 

読書 魔女とカルトのドイツ史

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イタリアでルネサンスの文化が花開いていたころ、多少のズレはあるが、ドイツ(神聖ローマ帝国)では、宗教改革と魔女狩りが「花盛り」であった

生真面目で律儀、仕事は正確なんだけど、なんとなく余裕がなく、陰鬱で、不機嫌そう、というようなマイナスイメージも付きまとう

そして20世紀、ヒトラーが先頭に立って、派手にやらかしてくれた

とにかく、ドイツ人は何かが違う!

日本も一時は組んだし、明治の日本はお手本にしたこともあるけど、この何かが違う感じは何だろう?

これをドイツにおけるカルト集団の歴史の中で解き明かしている

ひと言で言えば、カルトにハマり易い国民性、民族性

その背景には、合理的な表層文化の裏に潜む、非合理主義の基層文化、ドロドロしたデモーニッシュな心理、キリスト教文化に抑圧されたゲルマン精神

社会が大変動して、ドイツ人が強いイライラに陥ると、これらがまた噴き出してくるかもしれないよ

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読書 聖書の世界

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旧約聖書は紀元前2世紀、新約聖書は4世紀に、聖書編集委員会のような集まりがあって、いろいろあった記録史料の中から、これはいい、あれはダメ、などと取捨選択されてまとめられました

当然ですが、宗教の正統派を自認する人たちが選ぶ訳ですから、これは都合が悪いという「異端」史料は捨てられます

さらに、聖書の内容が余り膨大になると面倒なので、どうでもいい些末な史料も除かれます

そうやって削除された史料は「外典・偽典」などと呼ばれており、さらに聖書編集委員会の後に発見された重要史料(例えば「死海文書」)もあります

本書では、これらの聖書から漏れている史料の説明もあって、聖書成立の裏側が見えてきて面白い

「定価580円」とあるように、この本はコンビニの雑誌コーナーの片隅に置いて売ろうとしたらしく、一般大衆向けに分かりやすく書かれています

コンビニに牛乳を買いに来たついでに、聖書の本を買う人がどれほどいるのか知りませんが、それなりにいるから出版されたんでしょうね

(^_^;)

読書 ユダヤ人の発想

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著者はニューヨーク生まれのユダヤ人で、日本在住期間が長く、知日派として多くの著書がある

本書は石油ショックのころに書かれたので、日本人ビジネスマン向けに危機意識を煽る内容で、そのためにはユダヤ人の知恵に学べと諭している

実際、アメリカの政財界や学界など、著名ユダヤ人がキラ星のごとく並び、民族的な差別にもかかわらず社会的に成功しているが、その秘訣があるなら知りたくなる

本書では、その秘訣の一つを「疑問を提出する能力」に置いている

解答を覚えるのではなく、自分の置かれた状況に対して、適切な疑問を考えつくことが重要だと強調する

本書では主にユダヤ教の「タルムード」について説明し、ユダヤ人の知恵の源泉としている

タルムードは聖書の解説書のような存在だが、百科事典のような膨大な情報を含んでいる

その中では様々な疑問が提出され、過去の偉大なラビ(ユダヤ教の学者)たちが、様々な意見を提示している

一つの解答を示すのではなく、いろいろな意見を戦わせる、そのプロセスを記録したものがタルムードなのだそうだ

神については唯一絶対神を信じる民族が、問題の解答となると多様な考え方を尊ぶというのは、面白い逆説だと思う

(^_^;)

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▲タルムードの全巻

 

読書 日本ユダヤ超文明FILE

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日本ユダヤ同祖論というものがある

日本人とユダヤ人は、先祖が同じであるとする、かなり荒唐無稽な説なのだが、本書にはその「証拠」が山ほど集めてある

ユダヤ民族の歴史に12の支族が登場するが、そのうち10支族は今から2700年前にこつ然と歴史から姿を消し、行方不明になっている

この10支族が東へ東へと何世紀も旅(移住)を続け、ついに日本にたどり着いたというのが日本ユダヤ同祖論の骨子

日本にたどり着いた彼らは秦氏と名乗り、養蚕技術を伝えるなど、大和朝廷に多大な貢献をした

日本の古代史における秦氏の存在は間違いないのだが、問題は秦氏の先祖がユダヤ民族であるかどうか

正統な歴史学者から見れば、一種のトンデモ学説だと思うが、これが意外に面白く、中には信ぴょう性を感じさせるような「証拠」もある

日本では余り注目されていないが、イスラエルでは10支族の末裔探しが国家レベルで進められており、駐日イスラエル大使が必死に「証拠」集めをしたりして、日本との温度差が感じられる

(^_^;)

 

読書 コンサイスバイブル

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西麻布を散歩していたら、麻布霞町教会という小さな教会があって、その入り口に「自由にお持ちください」と置いてあったのがこの本

300ページ少々で、大きな活字でゆったり組んであるので、すぐに読める

旧約聖書と新約聖書の中から重要と思える文章を抜粋して、元の順序に関係なく再構成してあるので、大変読みやすい

分量で言えば、20分の1くらい

しかも要約ではなく抜粋なので、原文の雰囲気も伝わって来る

まことに初心者に親切な、聖書の入門バージョンと言える

聖書配布協力会というところが発行して、無料で配っているようで、教会へ行かなくてもここから入手可能

(^_^;)

読書 異端審問

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異端審問と魔女狩りは、火あぶりの刑などの残酷さでは似ているが、時期やエリアが違うだけでなく、何かが根本的に違う

魔女狩りは集団ヒステリーのような、一種の熱狂や恐怖心の中で遂行されていたように見える

異端審問は、カトリック教会の中の公式制度として、非常に冷静に、専門家(異端審問官)集団によって、粛々と遂行された

異端審問も初期のうちは、熱狂的なカトリック信者が情熱的に推進したが、徐々に教会の中で制度化が進み、やがて審問のためのがっちりした官僚組織が出来上がり、実務的なマニュアル類が整っていく

その審問マニュアルの精緻さには、この道一筋のプロ(異端審問のプロ!)の持つ職業倫理や執念のようなものも感じられる

およそ宗教とかイデオロギーの世界では、正統と異端の問題は避けて通れないのだが、異端審問には、ヨーロッパ的な厳格さが存分に表出しているように感じる

アジア的エーカゲンな世界は、経済の発展にはマイナス要素となるかもしれないが、少なくともアジア人の一人である私には、比較的居心地の良い世界に感じる

日本人の宗教的エーカゲンさは、さらに特別だけどね

(^_^;)

読書 旧約聖書を知っていますか

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聖書にはご存じの通り旧約と新約がありますが、旧約聖書はユダヤ教の聖典

もちろん「旧約」というのはキリスト教徒がそう呼んでいるだけで、ユダヤ教徒にとっては、旧約だけが「聖書」です

新約聖書を読んだことのある人ならご存じの通り、いきなり訳の分からない「××の父は××」みたいな系図の説明が始まって、それでウンザリして、聖書を読むのをやめた人も多いはず

聖書の民は、やたらと系図にこだわります

阿刀田高さんは小説家で、「奇妙な味」の短編推理小説で知られており、こっちも一時ハマリました

日本ペンクラブ会長を務めたり、行政能力も高いみたいです

そして小説のかたわら、古典文学の解説書なども書いています

さすが小説家だけあって、学者先生のお堅い本などとは比較にならない読みやすさ

まずあいやー、よっ!と覚えましょうと書かれています

ユダヤ人の先祖は、ブラハムから始まって、サク、コブ、セフ、・・・

この4人を押さえておけば、古代ユダヤ人の系図は理解できるそうで、その時には「あいやー、よっ!」と覚えればいいそうです

(^_^;)

 

 

読書 ゾロアスターの神秘思想

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一神教であるユダヤ教の成立に影響を及ぼした古代宗教に、ペルシャ(現在のイラン)のゾロアスター教があるので読んでみた

世界最古の一神教であると言われている

徹底した善悪二元論であり、この世のすべては善悪(神と悪魔、光と闇)の対決プロセスであると考える

光(炎)を崇めるので、拝火教とも呼ばれている

日本人などから見ると、西洋人は何でも二元論で割り切る傾向があるが、その背後にゾロアスター教があるのか、あるいは二元論的傾向の結果としてゾロアスター教が出て来たのか?

本家のイランはイスラム教に征服され、現在のゾロアスター教は世界全体で信者が数万人しかいない「消えつつある宗教」だが、インドのタタ財閥など信者には成功者が多い

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教だけでなく、仏教への影響もあって、特に空海の真言宗における大日如来信仰には、ゾロアスター教の影響が大きいとしている

ゾロアスターに相当するペルシャ語をドイツ語読みすると「ツァラトゥストラ」になり、ニーチェとの関係も深い

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新書にしては微に入り細にわたる宗教論が展開されていて、1回読んだくらいでは頭の中が混乱している

ちなみに、自動車メーカーの社名「マツダ」(→)は、創業者の姓(松田)であると同時に、ゾロアスター教の神アフラ・マズダー(Ahura Mazda)に由来する

マツダのエンブレム、を表してるそうだが、のようにも見える

(^_^;)

 

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▲ゾロアスター教の儀式

真言宗の護摩にちょっと似ている

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読書 一神教の誕生

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一神教3兄弟の、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の歴史や関係は、分かりやすく簡潔にまとめられている

ただ、なぜ一神教が生まれたのか?という疑問には、はっきりとした答えは無い

ユダヤ人の歴史を見ると、ニワトリと卵のような関係に見える

周囲の強大な民族や国家から弾圧されたユダヤ人の悲惨な歴史が、被害者意識と、その反動としての選民意識を生み出した

しかし、その特殊な選民意識が、周囲からユダヤ人を孤立させ、その悲惨な歴史の原因にもなった

宗教というものは遺伝子と似ていて、信者(個体)のことより、宗教(DNA)それ自身の利己的な論理で生成進化する

あるいは、ペストや中国コロナのような、伝染病にも似ている

(^_^;)