「漫画訳・雨月物語」という本を読みました
元になっている「雨月物語」は、江戸時代の作家、上田秋成の作品で、日本の中世を背景にしたホラー(怪談)話を9話ほど集めています
私は映画でも小説でも、ホラー系ダイスキ!なので、ついつい引き込まれます
つい最近も、春日武彦という精神科医の書いたホラー系の本にのめりこんだばかり
「雨月物語」は、石川淳が現代語に訳してますし、映画にもなってるので、その名前をご存じの方も多いかと思います
マンガですからスグ読めたんですが、その9つあるホラー話の冒頭に「白峯」という話があり、崇徳院と歌人の西行が、あの世とこの世の壁を越えて語り合うというオカルトっぽい内容です
崇徳院は、日本の三大怨霊(おんりょう)として有名な崇徳(すとく)天皇で、歴代の天皇の中でも最も不幸な死に方をした人
この世に未練と恨みを残して死んだために成仏できず、いろいろと厄介な「祟り(たたり)」を巻き起こして生者を苦しめる、と信じられてきました
能の「松山天狗」も、これを題材にしています
この祟りという考え方は、日本人の心性の非常に深いところにあって、日本の歴史に大きな影響を与えているだけでなく、実は我々現代日本人のメンタリティにも大きな影響を及ぼしています
祟りと似たようなものに「言霊(ことだま)」があり、
何かの悪い言葉を口にすると、それが現実化する
という一種の信仰
今でも、誰かが悪い(ネガティブな)言葉を発すると
「そんな縁起でもないこと言うな!」
などとたしなめる人がよくいますよね
自己啓発系の成功哲学には
「常に前向き、建設的な言葉を発していれば
それはいずれ現実化して成功できる!」
というプラス思考(ポジティブ・シンキング)の考え方がありますが、それのネガティブ・バージョンでしょうか?
日本人が幕末明治以降、西欧文明に接してほぼ2世紀
表面的には「自由」「権利」「進歩」みたいな西欧型の合理的概念に慣れています
でも日本人の心の深いところには、祟りや怨霊、言霊のような心性を脈々と残している
それは時には、スピリチュアルなものに引き込まれる動機にもなったりして(若い女性に多い)、メンタル面を重視した企業のマーケティング戦略にも影響を及ぼしたりする
崇徳院はこの世に恨みを残して死にますが、その元になった政治的事件が保元の乱
日本史上の有名な事件で、大学受験の受験科目に日本史を選んだ方はよくご存じだと思いますが、私は理系だったので今回改めて保元の乱について調べました
この事件(乱)は、天皇家の跡継ぎ問題から始まっていて、現代の愛子さまと秋篠宮の関係を思い起こしてしまいます
結局、後白河天皇方が勝ち、崇徳上皇(崇徳院)は破れて讃岐(現代の香川県)へ流され、二度と京(みやこ)を見ることなく亡くなります
このとき、両軍の戦略立案を担ったのが
後白河方の藤原頼長(敗者)
崇徳方の藤原通憲(信西)(勝者)
両者ともスゴい切れ者で、現代の官僚なんかによくいる秀才タイプ
ただし、頼長は藤原氏の中でも主流派(嫡流)に生まれたエートコのボンボン
信西はそうではなかったので、自分も藤原氏でありながら藤原氏主流派に恨みを持ち、保元の乱に勝利すると着々と藤原氏つぶしを始めます
その信西も、数年後の平治の乱に破れて死に、首はさらしものに
保元の乱は後白河天皇方が勝ったとは言いながら、実は本当の勝者は武士でした
乱の勝敗を決したのは武士の軍事力だったので、当然と言えば当然です
この事件からのち、政治の実権は徐々に武士へ移り、天皇家と摂関家(藤原氏主流)はパワーを失って「飾り物」になっていきます
その意味で保元の乱は、時代が古代から中世へ移り変わる画期的な事件でした
少し大ざっぱな言い方をすると、世界に多くの国家や民族がある中で、歴史的に中世という時代をきちんと経ているのは西欧と日本だけで、ほぼ現代の先進国と一致します
これを偶然と見るか、歴史の必然と見るか、なかなか面白いところです
(^_^;)~♪