復権目指す  都立新宿高校

予備校講師に学べ

復権目指す

都立新宿高校

授業診断受け助言仰ぐ

首都圏など私立高校の人気が高い地域で、難関大の合格者を増やして公立高校の“復権”を目指す取り組みが広がっている。東京都では都立高校の教師が受験のプロでもある予備校講師に授業を見てもらい、アドバイスを仰ぐ事業も始まった。

◆解説は効率優先で

東京都新宿区の都立新宿高校。6月29日、2年生の教室で教壇に立つ数学科主任、霧生智信教諭(46)の授業を、教育関連大手のベネッセコーポレーションの社員と、同社が運営する「お茶の水ゼミナール」の講師の計3人が見学した。

学習内容は「ベクトルの和と差」。数学が苦手な生徒にとってつまずきやすい分野の一つだ。霧生教諭は丁寧に板書し、問題を解く時間もゆっくりと与えた。

授業後、学校幹部をまじえた反省会。「予備校では今の内容をどのくらいの時間でこなしますか」。篠田直樹校長の質問に、お茶の水ゼミナールの松田聡平さん(31)が「僕ならば半分くらいですね」と答えた。

松田さんが気になったのは、問題を解く際に霧生教諭が2通りの解法を教えたことだ。「二つあると生徒たちは『どっちがいいんだよ?』となる。一つの方が混乱しない」。

効率を求める予備校流の指摘は続く。「生徒は板書の時間が長いのを嫌う。僕ならば多少乱暴でも問題文を短くします」

東京都教育委員会は今年度、ベネッセ、河合塾、駿台予備学校、代々木ゼミナールの大手予備校4社と契約し、都立新宿高校など10校の授業内容を「診断」してもらう「都立高校学力向上開拓推進事業」を始めた。予備校側は国数英など4教科の授業を年間4回ずつ診断。

これとは別に校長らを対象に進学実績を上げるためのアドバイスもする。予備校による派遣授業は珍しくないが、教諭の授業方法や学校経営に対する指導まで仰ぐのは異例だ。

◆対象校追加で拍車

東京都は47都道府県で唯一、公立高校よりも私立に通う生徒が多い。

危機感を抱いた都教委は、01年にかつての名門、日比谷高校など4校を東大などの最難関大を目指す「進学指導重点校」に指定。進学指導に実績がある教員を公募制で集め、教員に対する進学指導研修を行うなど優遇した。

03年に3校増やし、07年には2番手グループの「進学指導特別推進校」を追加、都立新宿高校など5校を指定した。各校は夏休みの補習や実力テストなどを実施し、競い合ってきた。今年から始まった予備校による「診断」もこうした流れの延長にある。

都立新宿高校の篠田校長は「大学入試問題を念頭に置いた授業の組み立て方などは予備校の方が一枚上手。どこを手厚く指導すれば良いかなど、学べる部分は学びたい。予備校から教わることに抵抗はない」と話した。

◇難関大への合格者増やせ 先駆け広島、首都圏で次々--重点校指定

◇私立に負けるな 成果基準より厳しく

県立高校の一部をエリート化する動きの先駆けとなったのは、有名大学への進学実績で私立や国立に後れを取っていた広島県だ。00年度に県立89校のうち 13校を「学力向上対策重点校」に指定。1校当たり200万円程度(当時)を補助し、学力向上に向けた独自の取り組みを促した。

同様の動きは私立が強い首都圏で一気に広がった。埼玉県は東京都と同じ01年度から、千葉県が04年度から、神奈川県も07年度から、それぞれ「学力向 上進学重点校」(神奈川)などの名称で、難関大への合格者数増加を目標に掲げた公立校を指定。首都圏以外では大阪府が府立10校を「進学指導特色校」に指 定し、来年度からエリート教育を始める。

もっとも、こうした取り組みが必ずしも結果につながるとは限らない。東京都は進学指導重点校7校の成果指標を、国立の最難関4大学(東大、東京工大、一 橋大、京都大)と国公立医学部への現役合格者数としているが、04年度入試の6人から10年度に41人に増やした日比谷高校以外は伸び悩んでいる。

このため、都教委は今月8日、12年度に重点校を選定し直すことを決定。新たに難関国立4大学と医学部への現役合格者数15人以上などの基準を設定し、クリアできなければ原則として重点校から外すことにした。

都教委は「重点校に入学してくる生徒の潜在能力からすれば、合格実績のさらなる向上は可能」としているが、これまで以上に学校同士の競争をあおる手法には批判も予想される。

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【私立高校に通う生徒の都道府県別割合】

50%台 東京(58.9%)

40%台 京都

30%台 福岡 大阪 神奈川 千葉 静岡 愛知 埼玉 広島 熊本

20%台 栃木 岡山 長崎 宮崎 山形 山口 高知 奈良 鹿児島 兵庫

宮城 茨城 福井 群馬 青森 大分 香川 石川 山梨 北海道

佐賀 三重 富山 岐阜 愛媛

10%台 島根 鳥取 新潟 岩手 福島 長野 滋賀 和歌山 秋田

1けた  沖縄 徳島

(※09年度学校基本調査より。全日制。左から割合が高い順)

毎日新聞 2010年7月17日 東京朝刊

さしのぼる 朝日のごとく さわやかに

復権して欲し~ (^_^;)

都立高の進学指導 新宿高校など10校が対象

予備校のノウハウを活用

httpv://youtu.be/OpsQeXQUero

2010年6月10日

都教育委員会は都立高校の大学進学指導に民間予備校のノウハウを活用することを決めました。

全国的にも珍しい連携で、校長から教科担任まで一貫した指導体制を確立するためといいます。

進学指導の“官民合体”はきょうの教育委員会で報告されました。

都教委によりますと、現在の高校では学年ごとに方針が違うなど進学指導がシステムとして確立していないところが多いといいます。

そこで、ビジネスとして受験を扱う民関予備校から年に数回アドバイザーを派遣してもらい、校長や進路指導担当には経営戦略という観点からの目標設定や指導体制の確立を、現場の教師には実際の授業でのアドバイスを受けさせることにしました。

今年度は新宿高校など10校が対象で、都教委では「効果的な授業の進め方から改善を積み重ねられるシステムまでを期待したい」と話しています。

都では10年ほど前から都立高校の大学進学率を上げるためのさまざまな施策を行ってきましたが、今回は生徒の学力向上とともに学校側の指導体制を確立することが目標となりました。

高校が予備校からアドバイスをもらうというのはいわば主客転倒という言葉もあり画期的に映りますが、ある意味では教育の場が開かれてきた象徴とも言えるでしょう。