日本人を説得して何かをさせるには「みんなやってますよ」と言えというのは、ジョークだけではなく、実生活でもよく体験する
日本人の自我の支えには、自分を取り巻く人間関係があり、それを日本では昔から「世間」(せけん)と呼んできた
日本人が最も恐れるのは、世間から爪はじきされることであり、世間の中で恥をかくことを恐れるので「恥の文化」とも呼ばれている
このような世間主義文化の対極にあるのが、西欧風の個人主義文化であり、「罪の文化」とも言われている
「日本人は個人主義が確立してない」などと偉そうに言う「進歩的文化人」が、少し前まではいたものだが、さすがに最近では、頭の悪い高校生くらいしか、こんなことは言わなくなった
いま大騒ぎになっている中国コロナ問題では、世間主義文化の方が、うまく対応しているように感じる
しかし、日本人の日常行動を現在でも広く規定している世間主義文化の中身となると、実は曖昧模糊としていて、よく分からないところが多い
政治家が不祥事を起こしたりすると「世間をお騒がせして申し訳ない」などと言って謝る
なぜ世間を騒がすことがいけないのか、たぶん外人さんには理解できないだろうし、日本人だってよくわかっていない
少なくとも、「世間を騒がすな」などという法律は無い
著者はヨーロッパ中世史が専門なので、逆に西欧風の個人主義文化にメスを入れ、それがカトリック教会によって過去何百年もかけて人工的に(強制的に)つくられた文化であることを示し、それとの比較の中で、日本の世間主義文化を解明しようとしている
この著者の本は割と読みやすいのだが、本書は専門家向けに本気で書いたようなところもあり、読むのに少し骨が折れた
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純然たる大学受験用の世界史の参考書
面白くもなんともない教科書的な記述だが、いろいろ読んだあとの頭の整理として読むと、非常に簡潔に要点だけ書いているので、頭の整理にはピッタリ
特に図表がシンプルで、余計な部分を捨てて、必要最小限に絞り込んだ情報だけを残しているので、スッキリ理解できる
逆にこんな無味乾燥な歴史を頭に詰め込まされる受験生が、少しかわいそうになる
著者は予備校「代々木ゼミナール」の人気講師として長年活躍し、教室には席が足りなくて立ち見する受験生までいた
たぶん、世界史でひと財産築いたのではなかろうか
独特の名調子の授業だったそうなので、その授業を聴いた上で、本書をまとめとして読めば、世界史が楽しくなったのかもしれない
新宿高校卒業生なら、授業で習った人も多いと思うが、私は残念ながら別の先生だった
武井先生から習いたかったのに、クラス分けで別の組に回されて、その別な先生に毒づいていた生徒(T君)もいたなぁ
私は当時、まだ歴史に大した興味もなく、理科系で世界史は受験科目でもなかったから、どうでも良かったんだけどね
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他に娯楽の少ない田舎や、都会で働く下層民にとって、昭和の初めころまで、夜這い(よばい)はごくごく普通の生活習慣だった
田舎の村で、一人の男(女)が村のほとんどの女(男)と関係していることなど、さほど珍しいことではなかった
商店では、番頭や手代、丁稚が、店の奥にいる女中に手を出すのは日常的だった
21世紀のいま読むと「ほんまかいな?」という赤裸々な話が続き、現代の日本人が抑圧している性欲が、実に大らかに、大っぴらに開放され、繰り広げられている
現代のオフィスラブなどとは次元の異なる、底抜けの自由奔放さだ
江戸時代からの儒教道徳などは、一部の武士階級だけに通用していたタテマエに過ぎなかったことがよく分かる
いまの世の中は、人間の根源的な楽しみである性が抑圧され、その反動として膨大な種類の娯楽が生み出されたのではないか?という逆説さえ感じる
著者は1909年生まれで、関西の田舎で生まれ育ち、大阪で丁稚奉公などいろいろな仕事を経験しながら、なぜか民俗学的な興味に取りつかれ、ひたすら体験し記録した
正統派民俗学の柳田國男には反発し、性とやくざと天皇を話題にしていないとして厳しく批判している
学者風に話を抽象化したり一般原則を導き出したりせず、ひたすら事実を延々と記述しており、非常にリアリティがあって面白い
今となっては、ほぼ消えてしまった古き良き時代?の、極めて貴重な記録である
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「中世の暗黒時代」に、人々は何を楽しみに生きていたのか?
テレビも無い、本も無い、遊びに行く繁華街も無い中世ヨーロッパの田舎に生きる貧しい農民たちにも、楽しみの空間はあった
それが、糸つむぎ部屋
古くから糸つむぎ(綿花から糸を作る作業)は女性の仕事とされ、退屈な作業のウサ晴らしに、若い女たちは村の糸つむぎ部屋に集まって糸をつむぎ、その合間にいろいろウワサ話などオシャベリを楽しんだ
糸つむぎに行くと言えば、親たちも余りうるさいことを言わないので、それを口実に堂々と外出できた(親たちも若い頃、同じことをしていた)
若い女が集まっていれば、それ目当てに村の若い男も集まって来て、糸つむぎ部屋は若い男女の出会いの場となった
やがて男女の会話や歌や飲食、ダンスの場となり、キスや抱擁が始まり、時には乱交パーティーにも似た雰囲気になった
「暗黒時代」どころか、けっこう楽しそうだね
グリム童話に代表される、中世からの言い伝えは、糸つむぎ部屋を背景とする話が多い
性的な乱れを嫌う教会は、ときどき禁止令を出したりするが、まったく徹底されない
近代になって糸つむぎの場が工場に移るにつれて、村の糸つむぎ部屋は消えてゆく
日本の田舎でも、若者部屋とか夜這いの習俗は、つい最近まで残っていた
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直前に読んだ「中世の星の下で」はヨーロッパ中世を扱っているが、本書は日本の中世を支配していた原理「無縁」をテーマとして、歴史を見るための一つの画期的な視点を導入している
左の本書表紙にもあるが、日本の古い絵画を見ると、横長楕円形がいくつか集まった「雲」のようなものが描かれている
これは当時の人々にとって「よく分からない世界」のシンボルだったのかもしれない
現代の自然科学万能の世界観からは想像しづらいが、中世までの世界は人間が支配した世界と、まだ人間支配に属していない「よく分からない世界」に分かれていた
人間支配に属した世界は、誰がその世界の主(支配者)であるかを明示された「有縁」の世界であり、それ以外の「よく分からない世界」は「無縁」とされた
大雑把に言えば、有縁の世界とは律令制で区画された農地であり、無縁はそれ以外の世界だった
有縁の民(百姓)は土地の支配者に隷従し、土地に縛り付けられた不自由な民だったが、それ以外の無縁の民(職人、商人、芸人、神職など)は、相対的に自由な民だった
それは支配者にとって不都合なことだったので、無縁の民は農民よりも下とされて、差別の対象となることも多かった
まさに「士農工商」なのだ
子供の遊びに「えんがちょ」というのがある
「えんがちょ」でつかまっても、「えんきった!」と宣言すると自由になる
これは「縁切った」であり、有縁(被支配)から無縁(自由)への移動宣言であると著者は指摘する
明治維新直前まで続いていた駆け込み寺は、当時の女性の離婚権にかかわる重大な存在だが、その根源は「縁切った」にあるらしい
現在でも、有縁の民(サラリーマン)と、無縁の民(自由業)の区分は、生きているのかもしれない
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海外旅行でいろいろな国の名所旧跡を巡るのは楽しいが、やがてそのような文化を生み出した国民性や民族性に興味が移って来る
同じように歴史を読んでいると、華々しい事件や変革の背後にある時代精神のようなものが知りたくなる
特に中世と言われる時代には、日本でも西洋でも、現在とはかなり異なる世界観や人生観、価値観があったはずだ
表面的に現代と比べると、かなり厳しい、つらく苦しい時代に見えるが、当時の人々は我々の住む現代(つまり彼らにとっての未来)のことなどまったく知らないし、今が「中世の暗黒時代」だと思って生きていたはずもない
そんな中世に生きた「ふつうの人々」の日常生活や心のヒダを探ろうとするエッセイ集
彼らは、どんなことを生きがいにして、何を恐れ、何を楽しみにして毎日を生きていたのか、それが少しずつ見えてくる
著者はドイツ中世史が専門の歴史学者で、一橋大学の元学長
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1964年に出た、歴史や文化に詳しい旅行ガイド
半世紀以上前に定価2400円だから、かなりの豪華本
ヤフオクで古本を安く買ったんだけどね
海外旅行先の人気ナンバーワンで、「すてきな旅」シリーズ全14巻のトップバッター
先日読んだ地方色豊かな「ドイツ」と比べると、まさにパリ一点豪華主義の国だなぁと感じる
西洋史と人類文化の展覧会場のようなパリの街、かなり以前に半月ほど旅したが、また行きたくなってくる
左の写真(←)を見ても分かるけど、凱旋門ってホントに、ゴジラがくぐれるくらいデカいです
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1948年、イングリッド・バーグマン(→)、2時間25分の大作
舞台は15世紀のフランスの百年戦争で、今風に言えば英仏戦争なんだけど、当時はまだ英仏ともに国家意識が確立していなかった
監督がヴィクター・フレミングなので、「風と共に去りぬ」に雰囲気が似ている
前半はジャンヌが「神の声」に目覚め、ダラケきった軍隊に喝を入れ、イングランド側を打ち破る
後半は一転して、敵軍に捕まった後のジャンヌの異端裁判を描く
バーグマンは1915年生まれ、この映画のころは32歳くらい

ジャンヌは12歳で「神の声」を聴き、19歳で火あぶりになったから、年齢的にはちょっとキツイんだけど、何とかなっちゃうところが超一流女優
それにしてもバーグマンとグレースケリー(→)、よく似てますね
米国映画なので、プロテスタントの立場からなのか、ジャンヌを火あぶりにしたカトリック聖職者を、徹底的に悪役の偽善者として、実に憎々しげに描いている
歴史的事実から言えば、魔女狩りで無実の者を火あぶりにしたのは、プロテスタントの方がはるかに多かったらしいですけどね
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▲火あぶりの刑
ジャンヌダルク死後の百年戦争を舞台とするマンガ作品
全ページカラーで、作者安彦良和(やすひこよしかず)の芸術的な画風が素晴らしい
一人の少女が男装して、ジャンヌの生まれ変わりのように、数奇な運命をたどる
勝利王シャルル7世は臆病で小心な人物として、その息子ルイ11世は悪役ながら魅力的な人物として描かれている
フランスの国土は戦乱で荒廃するが、群雄割拠していた封建諸侯は没落し、国王を中心とする中央集権フランス国家が成立していく
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▲パリ市内のジャンヌダルク像
