『無縁・公界・楽』と同じ著者で、有縁・無縁という切り口で日本史の新しい局面を切り開いている
その中で、日本の社会は14世紀に大きな転換点を迎えたと主張しており、それ以後の社会はつい最近(昭和の途中)まで続いていて、いま第二の転換点にあるとしている
逆に14世紀以前の社会は、現在の日本人が知っているものとは、世界観や人生観、価値観が相当異なった社会だったということになる
そこでは、無縁の場(市場、社寺、境界、河原、港など)で、無縁の民たち(職人、商人、芸人、神職など)が自由に活躍し、被差別民として蔑視もされていなかった
女性、子供、病人なども無縁性も持つものとされ、現在とは異なる扱いがなされていた
特に性に対する大らかさ、自由さには驚くべきものがあり、明治以降に入って来たキリスト教の性道徳が、現代の日本人の性道徳を、必要以上に縛り付けているのではないかと思えてくる
夫婦の離縁状(いわゆる三下り半)も、形式的には夫だけが書いているので、残された文書だけ見ると、妻には何の権利もなかったと思われがちだが、実はそうでもないらしい
妻から離婚を切り出して、あるいは妻が実家へ帰ってしまい、村や町の有力者も出てきて夫婦の言い分を聴き、夫が仕方なく離縁状を書くというケースも少なくなかったという
それでもどうしても夫が承諾しないレアケースのみ、昨日尋ねた北鎌倉の東慶寺のような、いわゆる駆け込み寺が機能していた
無縁性についての社会構造は、時代差とともに地域差も大きく、関西以西と関東以北では、別の国かと思うほど異なっていたようだ
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