80【ヒストリー】

読書 つげ忠男選集

つげ忠男アウトロー選集1~どぶ街~_01

つげ義春は大好きな漫画家の一人で、彼の作品はほとんど、何度も読んだ

そのつげ義春の弟が、本書の作者のつげ忠男

その作品選集10冊を、一気に読んだ

つげ忠男アウトロー選集1~どぶ街~

つげ忠男アウトロー選集2~無頼の街~

つげ忠男アウトロー選集3~無頼平野~

つげ忠男アウトロー選集4~狼の伝説~

つげ忠男アウトロー選集5~流れ者たち~

つげ忠男昭和選集1~きなこ屋のばあさん~

つげ忠男昭和選集2~雨季~

つげ忠男昭和選集3~夜よゆるやかに~

つげ忠男昭和選集4~遠い夏の風景~

つげ忠男昭和選集5~ある予感~

絵のタッチは兄義春と似ているが、雰囲気は兄より暗く鬱屈して乾いている

忠男は一時、血液銀行で働き、その経験が作品の中に何度も登場する

血液銀行は、今は無くなったが、「売血所」とも呼ばれ、輸血用や血液製剤の原料として血液を買い取る場所で、社会の底辺の人間がその日の食費やギャンブル代のために、自分の血液を売りに集まった

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兄義春(←、左)も相当に暗いのだが、そこにはある種の温かみもある

弟忠男(←、右)はそれよるはるかに暗く、冷たく、乾いていて、何とも救いが無い雰囲気が漂っている

第二次大戦の敗戦からすぐというこの時代の日本は、社会全体が暗くて貧しかったし、それはこの選集の中にも濃厚に表現されている

兄弟が育ったのは、昭和20年代、高度成長前の貧しい時代の東京下町、そのまた特に貧しいエリア

将来に希望を持てない鬱屈した時代精神が感じられる

つげ義春のマンガにも出てくるが、この兄弟の父親は早くに亡くなっている

母親の再婚相手である病気がちの義父は残酷な性格の男で、つげ兄弟はひどい児童虐待を受けて育った

正式な美術教育はおろか、家庭の貧しさから義務教育にすら満足に通えなかった兄弟が、二人ともプロの漫画家になっているのは、まさに兄弟共通の才能の成せるところなのだろう

今回も一気に10冊、まったく退屈せずに読めたということは、漫画家としての非凡な才能を感じる

特にアウトロー選集は、社会の掃きだめのような貧しくて暗い街が主な背景になっていて、日常的に暴力と退廃と背徳が横行するハードボイルド的な作品集

全体に、夢と現実が織り交ざったようなシュールな話が多い

兄つげ義春は、睡眠中にみた夢を漫画化したが、その影響は弟忠男と蛭子能収に及んでいる

(^_^;)

 

三菱創業150周年

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 上の写真の一番右のおじさんの

  首がやたら長いのが気になります

 三菱銀行のエラい人らしいです

  (^_^;)

 

2020年は、三菱が創業してから150周年の節目の年に当たる。

創業者であり、初代の社長に就いたのは岩崎彌太郎その人である。

大転換期の日本の世で、岩崎彌太郎は、どのように起業し、発展させたのか。

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 * * * * * * *

岩崎彌太郎(いわさき・やたろう)→

1835~85年(天保5~明治18年)。

三菱の創業者であり、初代社長

幕末から明治維新へ。激動の時代を生き抜き、三菱の礎を築いた。

1835(天保5)年、土佐井ノ口村(現・高知県安芸市)に生まれる。

指がやたら長いのが気になる→

 (^_^;)

『岩崎彌太郎傳』によると、幼少期の彌太郎は、

《気性は激しく、負けることが嫌いである。同じ年頃の子どもを集めて大将を気取り、敏捷で頭の回転が早い》(現代語訳)

とある。

今風に言えば“やんちゃ”だったのである。

一方で、学問に興味を持つのも早かった。

「彌太郎は15歳で、伯母の嫁ぎ先である儒学者の岡本寧浦(おかもとねいほ)の塾に入り、懸命に学びます」

と解説するのは、「公益財団法人 三菱経済研究所」の常務理事・村橋俊樹さんである。

54(安政元)年、彌太郎19歳のときにチャンスが巡ってくる。

江戸詰めに決まった儒学者の奥宮慥斎(おくのみやぞうさい)の従者として、随行が認められたのである。

「その江戸で、岡本寧浦と親交のあった安積艮斎(あさかごんさい)の見山(けんざん)塾に入り、一層、勉学に打ち込みます。ところが、折あしく郷里で父親の彌次郎がトラブルに見舞われ、重傷を負ったという知らせが届きます。彌太郎はやむなく帰郷。江戸遊学は1年足らずで終わりました」

この時、彌太郎は江戸から土佐までの約800kmを16日間で走破している。

当時、土佐藩の早馬飛脚でも14日間かかるというから、彌太郎は並外れた健脚の持ち主でもあった。

帰郷後、彌太郎は父親のトラブルの遠因で投獄される。

約7カ月の入獄の末、出獄するが、傷心の日々。

そんな中、土佐藩開明派の指導者・吉田東洋の少林塾に入り、後藤象二郎(しょうじろう)などの知遇を得る。

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読書 偶然からモノを見つけ出す能力

偶然からモノを見つけ出す能力 -「セレンディピティ」の活かし方 (角川oneテーマ21)_01

著者は三菱電機の海外プラント部門にいた人で、大学の講師もしている

セレンディピティとは何か?に関するエッセイ集、といった感じの本

発明や発見の背後に「偶然」が存在し、その偶然に出会ってその意味するところを察知した「察知力」を絡めて、セレンディピティを「偶察力」と和訳している

ルネサンスの頃の逸話から、セレンディピティという語が生まれ、発明発見やイノベーション、パラダイムシフトに大きな関連を持つと認識されてゆく歴史をたどっている

日常の生活や社会を維持してゆくには「常識」が大きな役割を果たしている

しかし、この常識が進歩の妨げになることも少なくない

そのとき、常識を打破するきっかけになるのが偶然であるので、偶然とは「神からの贈り物」であるとする

かつて空を飛ぶためには、「はばたかなければならない」というのが常識だった

しかし、鳥が羽根を動かさずに空を滑空しているのを偶然に目撃し、固定翼でも空を飛べるのではないかと察知し、固定翼飛行機の開発を考えた日本人がいた

このとき日本陸軍は頭が固くて(セレンディピティが乏しくて)開発費用を出し惜しみ、そのせいで固定翼飛行機の実用化では、ライト兄弟が世界初の椅子に座ることになった

セレンディピティの有無は、個人の運命だけでなく、国家の盛衰をも左右する

(^_^;)

 

読書 新・クトゥルフ神話完全ガイド

新・クトゥルフ神話完全ガイド (コスミックムック)_01

ラブクラフトが開拓したクトゥルフ神話の世界を大雑把に概観するためのガイドブック

特にイラストが素晴らしい

ラブクラフトは、1890年に生まれ、1937年に46歳で亡くなっているが、没後1世紀近くのクトゥルフ神話世界の展開もたどっている

特にクトゥルフ神話に参加したり関わったりした日本人の説明が楽しい

水木しげる、魔夜峰央、諸星大二郎など、私の大好きな漫画家さんたちも登場する

「冬彦さん」佐野史郎の、ラブクラフトへの傾倒ぶりは徹底している

(^_^;)

 

読書 魔犬

魔犬 ラヴクラフト _01

ラブクラフトのコミカライズはPHP版が多いのだが、これは角川版

表題作の「魔犬」は、世間の退屈さに飽きた二人の若い男の奇怪な体験ストーリー

二人は友人で、おそらく貴族の生まれで、遊びにも恋愛にも、学問にも芸術にも、そして冒険にも飽きていた

二人が最後にたどりついた楽しみは、何と墓場荒らしという背徳の世界だった

ヨーロッパ各地の数世紀前からある墓地を研究探索し、歴史に名を遺す人物の墓を暴いて、遺品を収集してコレクションを作っていた

遺跡発掘の私的な真似事(お遊び)のようなもの

そしてオランダのある古い墓で見つけた遺品から、二人はとんでもない運命に巻き込まれていく

人間が欲望を満足され過ぎると、次には強烈な退屈に襲われるというのは、歴史が証明している

典型的にはローマ帝国の「パンとサーカス」だが、ヨーロッパの社交界も、サーカスの代用品かもしれない

いま世界の先進国では、ミニマムインカムと称して、働かなくても食える社会を目指しているが、その先に来るのがどんな社会かを、いまのうちに真剣にイメージしておく必要を感じる

本書には「魔犬」のほかに「神殿」「名もなき都(無名都市)」が収められている

後2作はPHP版にも別な漫画家さんで収録されていて、比較の楽しみもあった

本書を描いた田辺剛氏の画力は素晴らしいと思う

(^_^;)

 

読書 闇にささやく者

闇にささやく者 クトゥルフ神話の宇宙怪物 クラシックCOMIC_01

コズミックホラー(宇宙的恐怖)と呼ばれているラブクラフト作品群の中でも、特に宇宙をテーマとする色彩が強い作品

地球防衛軍こそ登場しませんが、宇宙人が地球を侵略するというストーリーで、SF小説の先駆けです

人間の脳だけを取り出して宇宙旅行をするという作中のアイデアは、1世紀前の作品としては斬新です

人類は半世紀前(1969)に月面上に降り立ちました

当時、次は火星だ太陽系外だとか騒いだけれども、その後に月以外の星に人類が行くことは無かったし、月にすら行かなくなった

過酷な宇宙環境と宇宙の広大さに対して、人間の肉体は余りにも脆くて弱く、寿命は短い

日本の小惑星探査機「はやぶさ」のように、高性能の観測機器を遠い宇宙に飛ばし、収集したデータや試料を回収するのが、地球周回以外の宇宙開発の主流になっている

脳だけ取り出す技術は現在医学でも無理だが、人間の感覚機能を代行する観測機器を宇宙に飛ばすというのは、それに近い方法と言えそうだ

さらに話は飛ぶが、人間が毎日のように睡眠中に見ているは、時空間を超越しているので、脳だけが宇宙旅行をしたり、タイムマシンに乗ったりしているようなものかもしれない

(^_^;)

 

読書 ニャルラトホテプ

ニャルラトホテプ★2011 這い寄るクトゥルフの狂気 クラシックCOMIC_01

「ニャルラトホテプ」とは、ラブクラフトによるクトゥルフ神話に登場する邪神

「ナイアルラトホテップ」など、表記にはいろいろブレがある

私がこの名に初めて出会ったのは、一時流行したファイル共有ソフト「ウィニー」の応用ソフトの名前だ

今は違法になったウィニーだが、当時は合法で、互いに手持ちのソフトやコンテンツを自由に交換できる便利なソフトとして一世を風靡した

ウィニー開発者の47氏(本名金子勇氏)は、「著作権法違反幇助」という罪名で逮捕されたが、のちに無罪が確定した

ウィニーは、自分がファイルを1つアップしたら、ネットからファイル1本ダウン出来るという、一種の相互扶助的な仕組みになっていた

ナイアルラトホテップという応用ソフトは、この1対1交換の原理を破るもので、自分は1本もアップせずに、何本でもウィニーネットからファイルをダウン出来るという非常に都合の良い代物で、これが普及すると誰もアップする人がいなくなり、ウィニーのファイル交換の世界が崩壊する

もちろん、クトゥルフ神話とは何の関係も無い

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読書 チャールズ・ウォードの奇怪な事件

チャールズ・ウォードの奇怪な事件 クトゥルフ恐怖譚 クラシックCOMIC_01

ラヴクラフトにとってプロヴィデンスは最も落ち着く場所だったようで、46年の短い生涯のほとんどをここで過ごし、独特のクトゥルフ神話の世界を紡いだ

ラヴクラフトはプロヴィデンスに住む伯母に宛てた手紙の中で

「現実世界を打ち捨てて、古びた場所に引き篭もり、読書や書き物をしたり、風変わりな場所や歴史の残る場所を訪ねたりして、静かに暮らしたい」

と書いて、過ぎ去った時代への偏愛や、異邦への憧憬を表している

日本で言えば出家隠棲のような生き方だが、彼が生きた時代のアメリカは、第一次大戦や世界大恐慌で落ち着かなく、彼は英国に似た落ち着きのあるプロヴィデンスを愛した

彼の墓には「私はプロヴィデンスである」と記されている

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▲現在のプロヴィデンスの街並み

 

読書 ダゴン

ダゴン クトゥルフ恐怖神話の源泉 クラシックCOMIC_01

ラブクラフトの初期作品

「無名都市」

「ダゴン」

「魔宴」

「神殿」

を収録している

狂える詩人アルハザードによる魔道書「ネクロノミコン」が登場します

現在のヨーロッパが世界の先進エリアの座を確実にしたのは18世紀の産業革命以降なので、それまではオリエント(エジプトやメソポタミア)の巨大帝国がヨーロッパ人にとっての恐怖の的、トラウマだった

それよりはるか昔に栄えた爬虫類的な生物の文明への恐怖が、一連の神話のテーマです

作品が書かれたのは今からほぼ1世紀前

当時の日本で発生した関東大震災(1923年)は、世界に大々的に伝えられ、文明崩壊事件として、ラブクラフトにも強い影響を与えたとされています

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読書 京都の旅

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「近頃の旅ガイドは、グルメ本みたいで詰まらない」と言う文豪・松本清張が、自ら旅ガイドを作った

京都の名所旧跡40か所を選び、友人の歴史学者・樋口清之の協力を得ているので、歴史的な背景説明が豊富だ

清張自身も古代史に造詣が深いので、古代史への言及も多い

第二次大戦で日本の大都市のほとんどが空襲で壊滅し、現在あるのは戦後の街であるのに対して、京都には平安時代から続く永い歴史が、現在の大都市の中に生きている

観光化された、俗化された、京都人は閉鎖的で意地悪だなどという京都批判は多いが、やはり京都の魅力は捨て難い

京都には何度も旅しているので主な名所は行き尽くした気分でいたが、この本を読んで京都は奥が深く、まだまだ楽しめそうだと感じた

幸か不幸か、今はコロナで外国人観光客が激減し、どこの名所も空いているという

京都の紅葉の季節は11月中旬から12月上旬と言われているので、何となく落ち着かない

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