ユダヤ

読書 ユダヤ教

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シリーズ「世界の宗教」全8巻のうちの1冊

ユダヤ教についての、最も正統的な入門書だと思う

10年くらい前に1回読んだが、頭の整理をしたくなって、今回再読した

特に訳者(剛平)の造詣が非常に深く、訳文もこなれていて読みやすい

失われたユダヤ10支族が古代日本に渡来して秦氏を名乗ったという説があるが、偶然の一致か?

巻末にある、訳者による参考文献解題は、とてもよく行き届いている

これからユダヤ教の研究を進めたい人には非常に役に立ちそうだ

今のところ私には、ユダヤ教の研究に残りの人生を捧げる気は無いけれど

(^_^;)

読書 スペインを追われたユダヤ人

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かつてスペインは、ユダヤ教徒、キリスト教徒、イスラム教徒という「一神教三兄弟」の混在する土地だった

キリスト教の極端な宗教的非寛容は、15世紀には、先鋭化、制度化されて、異端裁判(異端審問)が始まる

「洗礼(改宗)か、死(火あぶり)か」の決断を、ユダヤ教徒は迫られる

多くのユダヤ教徒が、キリスト教への改宗を選択し、マラーノ(豚)と呼ばれるようになる

改宗した後もマラーノには差別と弾圧があり、心の中はキリスト教とユダヤ教に引き裂かれる

異端裁判官は「正義の人」として、神の名のもとに何らの罪悪感もためらいもなく、何万人もの異端者を生きながらに、火あぶりの刑に処した

やがて死の恐怖は、改宗したマラーノにも迫り、ポルトガルへ、さらにイベリア半島の外へと、逃避と流浪の旅が続く

キリスト教の残忍な異端裁判制度は、その後300年以上、つい最近まで続いていた

本書は、そのようなマラーノたちの足跡をたどる旅日記風に書かれている

((((;゚д゚))))

 

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スペインの異端裁判官(大審問官)

枢機卿フェルナンド・ニーノ・デ・ゲバラ

 

読書 ユダヤ人の発想

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著者はニューヨーク生まれのユダヤ人で、日本在住期間が長く、知日派として多くの著書がある

本書は石油ショックのころに書かれたので、日本人ビジネスマン向けに危機意識を煽る内容で、そのためにはユダヤ人の知恵に学べと諭している

実際、アメリカの政財界や学界など、著名ユダヤ人がキラ星のごとく並び、民族的な差別にもかかわらず社会的に成功しているが、その秘訣があるなら知りたくなる

本書では、その秘訣の一つを「疑問を提出する能力」に置いている

解答を覚えるのではなく、自分の置かれた状況に対して、適切な疑問を考えつくことが重要だと強調する

本書では主にユダヤ教の「タルムード」について説明し、ユダヤ人の知恵の源泉としている

タルムードは聖書の解説書のような存在だが、百科事典のような膨大な情報を含んでいる

その中では様々な疑問が提出され、過去の偉大なラビ(ユダヤ教の学者)たちが、様々な意見を提示している

一つの解答を示すのではなく、いろいろな意見を戦わせる、そのプロセスを記録したものがタルムードなのだそうだ

神については唯一絶対神を信じる民族が、問題の解答となると多様な考え方を尊ぶというのは、面白い逆説だと思う

(^_^;)

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▲タルムードの全巻

 

読書 日本ユダヤ超文明FILE

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日本ユダヤ同祖論というものがある

日本人とユダヤ人は、先祖が同じであるとする、かなり荒唐無稽な説なのだが、本書にはその「証拠」が山ほど集めてある

ユダヤ民族の歴史に12の支族が登場するが、そのうち10支族は今から2700年前にこつ然と歴史から姿を消し、行方不明になっている

この10支族が東へ東へと何世紀も旅(移住)を続け、ついに日本にたどり着いたというのが日本ユダヤ同祖論の骨子

日本にたどり着いた彼らは秦氏と名乗り、養蚕技術を伝えるなど、大和朝廷に多大な貢献をした

日本の古代史における秦氏の存在は間違いないのだが、問題は秦氏の先祖がユダヤ民族であるかどうか

正統な歴史学者から見れば、一種のトンデモ学説だと思うが、これが意外に面白く、中には信ぴょう性を感じさせるような「証拠」もある

日本では余り注目されていないが、イスラエルでは10支族の末裔探しが国家レベルで進められており、駐日イスラエル大使が必死に「証拠」集めをしたりして、日本との温度差が感じられる

(^_^;)

 

読書 旧約聖書を知っていますか

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聖書にはご存じの通り旧約と新約がありますが、旧約聖書はユダヤ教の聖典

もちろん「旧約」というのはキリスト教徒がそう呼んでいるだけで、ユダヤ教徒にとっては、旧約だけが「聖書」です

新約聖書を読んだことのある人ならご存じの通り、いきなり訳の分からない「××の父は××」みたいな系図の説明が始まって、それでウンザリして、聖書を読むのをやめた人も多いはず

聖書の民は、やたらと系図にこだわります

阿刀田高さんは小説家で、「奇妙な味」の短編推理小説で知られており、こっちも一時ハマリました

日本ペンクラブ会長を務めたり、行政能力も高いみたいです

そして小説のかたわら、古典文学の解説書なども書いています

さすが小説家だけあって、学者先生のお堅い本などとは比較にならない読みやすさ

まずあいやー、よっ!と覚えましょうと書かれています

ユダヤ人の先祖は、ブラハムから始まって、サク、コブ、セフ、・・・

この4人を押さえておけば、古代ユダヤ人の系図は理解できるそうで、その時には「あいやー、よっ!」と覚えればいいそうです

(^_^;)

 

 

読書 ゾロアスターの神秘思想

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一神教であるユダヤ教の成立に影響を及ぼした古代宗教に、ペルシャ(現在のイラン)のゾロアスター教があるので読んでみた

世界最古の一神教であると言われている

徹底した善悪二元論であり、この世のすべては善悪(神と悪魔、光と闇)の対決プロセスであると考える

光(炎)を崇めるので、拝火教とも呼ばれている

日本人などから見ると、西洋人は何でも二元論で割り切る傾向があるが、その背後にゾロアスター教があるのか、あるいは二元論的傾向の結果としてゾロアスター教が出て来たのか?

本家のイランはイスラム教に征服され、現在のゾロアスター教は世界全体で信者が数万人しかいない「消えつつある宗教」だが、インドのタタ財閥など信者には成功者が多い

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教だけでなく、仏教への影響もあって、特に空海の真言宗における大日如来信仰には、ゾロアスター教の影響が大きいとしている

ゾロアスターに相当するペルシャ語をドイツ語読みすると「ツァラトゥストラ」になり、ニーチェとの関係も深い

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新書にしては微に入り細にわたる宗教論が展開されていて、1回読んだくらいでは頭の中が混乱している

ちなみに、自動車メーカーの社名「マツダ」(→)は、創業者の姓(松田)であると同時に、ゾロアスター教の神アフラ・マズダー(Ahura Mazda)に由来する

マツダのエンブレム、を表してるそうだが、のようにも見える

(^_^;)

 

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▲ゾロアスター教の儀式

真言宗の護摩にちょっと似ている

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読書 一神教の誕生

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一神教3兄弟の、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の歴史や関係は、分かりやすく簡潔にまとめられている

ただ、なぜ一神教が生まれたのか?という疑問には、はっきりとした答えは無い

ユダヤ人の歴史を見ると、ニワトリと卵のような関係に見える

周囲の強大な民族や国家から弾圧されたユダヤ人の悲惨な歴史が、被害者意識と、その反動としての選民意識を生み出した

しかし、その特殊な選民意識が、周囲からユダヤ人を孤立させ、その悲惨な歴史の原因にもなった

宗教というものは遺伝子と似ていて、信者(個体)のことより、宗教(DNA)それ自身の利己的な論理で生成進化する

あるいは、ペストや中国コロナのような、伝染病にも似ている

(^_^;)

読書 宗教社会学入門

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著者は全共闘世代(1948生まれ)で、就職を潔しとしなかったのか、在野の哲学者として分かりやすい思想書などを書いていたが、その後に40歳過ぎてから東工大の先生になった(すでに退官)

その語り口は非常に分かりやすく、山本七平(イザヤ・ベンダサン)を大学生・社会人向きとしたら、彼の本は高校生でも理解できると思えるほど、易しくかみくだいて書いてある

一部の専門家しか読まない本や論文は別として、本来、本と言うものは、このように書くべきものだと思う

ただし、山本七平ほどの知的刺激は無く、よく言えば、頭の中の整理にはなったかな~、という感じ(まあ、「入門」だからね)

表題の通り、社会学的な立場から宗教を解説しており、序論、ユダヤ教、キリスト教、宗教改革まで読んだ(イスラム教、仏教はとばした)

社会学的な立場から、というのは、宗教を社会構造の一つとしてとらえるという立場で、宗教意識が希薄な日本人にはイマイチぴんと来ないけど、日本人を「日本教徒」と考えれば、まさしくピッタリ当てはまる

(^_^;)

読書 日本人とユダヤ人

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著者のユダヤ人イザヤ・ベンダサンが、実は日本人の山本七平(→)であるというのは、すでに広く知れ渡っている

ユダヤ教やユダヤ人に関する説明には、意図的かどうかは別に、誤りがあることも指摘されている

要するに、本書はほとんど日本人論であって、ユダヤ人論は「刺身のツマ」なのかもしれない

しかし、日本人には目からウロコがボロボロ落ちるような斬新な視点を、素晴らしい説得力で展開していることは間違いない

読書の楽しみここに極まれり!といった気分になる

この本を最初に読んだのは、もうかなり以前になるが、当時の大ベストセラーとなり、「日本教」「水と安全はタダ」という言葉が流行語になったのを記憶している

日本人とユダヤ人には、その歴史や民族性においてまったく正反対な点が多いが、一方で共通する点もあって、この2つの極めて個性的な民族を対照させたことは誠に素晴らしいと思う

(^_^;)

読書 ユダヤ人

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ユダヤ人とは何か?」という問いに対する答えの一つとして、歴史的な名著とされている本です

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読んでいると、ユダヤ人は全面的に哀れな被害者であり、悪いのは全て「反ユダヤ主義者」だと断定していて、20世紀を代表する思想家サルトル(→)にしては、ずいぶん善悪二元論で話を単純化しているなぁと感じます

この本のフランス語版の原著が出版されたのは1954年、戦後9年が過ぎたころですが、元となる原稿が書かれたのは1944年、大戦の真っ盛り、ドイツ人がユダヤ人を毎日ガス室で大量虐殺していたときでした

当時サルトルの母国フランスはドイツ軍に占領され、アメリカ軍によって解放されたばかりという状況で、ドイツ人に対する憎しみが満ちていたころですので、分からないこともありません

ユダヤ人の屈折して複雑な状況心理に対する洞察には、さすが天才哲学者だなぁと思わせるものがあります

最後に、ではどうすればいいのか?という方法論の話になると、「社会主義革命が必要だ!」としており、当時の時代精神がいかに現在と違っていたかを、まざまざと見せつけられます

サルトルは1980年に亡くなっていますが、その後ソビエト連邦が崩壊し、中国共産党がチベット人を大虐殺して民族絶滅に追い込み、ウイグル人を強制収容所へ送り、自由を求める香港人を弾圧している現状をもし彼が見たら、どう考えるでしょうか?

(^_^;)

 

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