読書 魔犬

魔犬 ラヴクラフト _01

ラブクラフトのコミカライズはPHP版が多いのだが、これは角川版

表題作の「魔犬」は、世間の退屈さに飽きた二人の若い男の奇怪な体験ストーリー

二人は友人で、おそらく貴族の生まれで、遊びにも恋愛にも、学問にも芸術にも、そして冒険にも飽きていた

二人が最後にたどりついた楽しみは、何と墓場荒らしという背徳の世界だった

ヨーロッパ各地の数世紀前からある墓地を研究探索し、歴史に名を遺す人物の墓を暴いて、遺品を収集してコレクションを作っていた

遺跡発掘の私的な真似事(お遊び)のようなもの

そしてオランダのある古い墓で見つけた遺品から、二人はとんでもない運命に巻き込まれていく

人間が欲望を満足され過ぎると、次には強烈な退屈に襲われるというのは、歴史が証明している

典型的にはローマ帝国の「パンとサーカス」だが、ヨーロッパの社交界も、サーカスの代用品かもしれない

いま世界の先進国では、ミニマムインカムと称して、働かなくても食える社会を目指しているが、その先に来るのがどんな社会かを、いまのうちに真剣にイメージしておく必要を感じる

本書には「魔犬」のほかに「神殿」「名もなき都(無名都市)」が収められている

後2作はPHP版にも別な漫画家さんで収録されていて、比較の楽しみもあった

本書を描いた田辺剛氏の画力は素晴らしいと思う

(^_^;)

 

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