かつては、日本のキツネが暮らしている地域では、人がキツネにだまされたという話は日常のごくありふれたもののひとつだった。それも、そんなに昔の話ではない。
キツネに悪さをされた。キツネに化かされた。そういった話は、いまから五十年くらい前の二十世紀半ばまでは、特にめずらしいものではなかった。
…ところが1965年頃を境にして、日本の社会からキツネにだまされたという話が発生しなくなってしまうのである。
一体どうして。本書の関心はここからはじまる。そのことをとおして、歴史学ではなく、歴史哲学とは何かを考えてみようというのが、本書の試みである。
内山 節 うちやま たかし 哲学者
1950年東京都生まれ。
1968年都立新宿高校卒。独学で哲学を学ぶ。
1970年代に群馬県上野村に移住。
2004年立教大学21世紀社会デザイン研究科教授、09年同退職。
専門は存在論、労働論、自然哲学など。
著書に『貨幣の思想史』、『怯えの時代』、『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』など。
日本の高度成長は 1954年(昭29)~1973年(昭48)
27回生の誕生から高校まで ずっと高度成長 (^_^;)