新宿高校の野球教室

野球教室は、新宿高校硬式野球部の田久保裕之監督の挨拶からスタートし、前半は遊び感覚で行えるようなゲームを行った。

筑波大学准教授の川村 卓氏が考案したというこのゲームは、普段小学生が手にしてる軟式ボールではなく、柔らかい素材のボールを採用し、守備も素手で行えるもの。

野球のルールを基にゲームは作られているのだが、打球の方向へ全員が動くなど、チーム全員が楽しく参加できるようなアレンジがされており、チームが得点を決める度に大きな歓声が聞かれた。

また、「ホームランを打つ喜びを小学生にもっと体験させてあげたい」という思いから、ゲームフィールドはあえて狭く設定されており、ある小学生の保護者が「普段からこれくらいホームラン見れたらいいですね」と語るほど、たくさんのホームランが飛び出した。

参加した小学生からは「簡単にできて楽しかった」「お兄さんはみんな優しかった」といった声が聞かれ、大満足の様子だった。

後半はグラウンドを離れ、教室で座学を行った。

野球教室に座学取り入れたのは、同校が進学校であることを野球教室にも活かしたいという田久保監督の意向からで、毎日勉強に励む高校生が、勉強やスコアの付け方を小学生に丁寧に指導した。

小学生への授業の準備は、田久保監督は何も指示を出さずに、すべて選手やマージャー達だけで行ったそうだ。

久保監督は「配布するプリントやパワーポイントには、私は目を通していなかったが、しっかりと出来ていました。また、筆記用具を忘れた子ども達のために、予備の筆記用具も自分たちで考えて用意していた。本当に良くやったと思います」と笑顔で語り、選手やマネージャーを労った。

高校野球どっとこむより

baseball_boy

 

学校の先生とは思えないような

マーケティングセンスのある監督ですね  (^_^;)

 


保護者に向けての講義を行う様子

指導者や保護者に向けた講義も開講

また、後半の座学は小学生だけで無く、指導者や保護者に向けた講義も開講された。理学療法士や管理栄養士の方を招き、子どものスポーツ障害や子どもの食事に関する講義を行い、少年野球チームの指導者や選手の保護者、計40名が参加した。「子どものスポーツ障害と予防」というテーマで講義を行った理学療法士の石井斉氏は、まだ出来上がっていない子どもの骨、軟骨に無理なストレスをかけることの危険性を解説。講義中は、必死にメモを取る姿が見られ、講師たちに質疑応答を投げかける保護者たちも大勢いるなど、終始、熱気に包まれた講義となった。

野球教室終了後、参加した保護者に感想を伺うと「最初はふかふかのボールを使うと聞いて、エッと思ってしまったが、いざやってみると遊びが野球に繋がるようなことがたくさんあった。競技人口の減少がニュースになっているが、遊び感覚から入っていける取り組みがあるといいと思った」と話し、納得の表情を見せた。

また、小学生に指導を行う立場だった都立新宿の選手も「これまで経験したことが無いことだったが、小学生に野球や勉強を教えることで、自分たちも成長することができたと思う」と語り、自らの成長に手応えを感じた様子だった。

今回の野球教室を主宰した硬式野球部の田久保監督にも話を伺うと、「やって本当によかった。狙い通りでした」と手応えを語った。実は田久保監督、以前から野球の競技人口減少に危機感を持っており、少年野球向けの野球教室を開催したいという思いをずっと持っていたという。
「野球は人数がいて当たり前、応援してくれる人がいて当たり前になっていて、みんな勘違いしています。少年野球の競技人口は、少子化の8倍のスピードで減少していて、少年野球を何とかしないといけないと考えています」
今回、遊び感覚のゲームを取り入れたのは、学校などでゲームを行ってもらい、友達を野球に誘う良いきっかけなって欲しいという狙いがあった。
田久保監督は、「今日の野球教室で(いけるという)確信が持てたので、また開催したいです」と語り、第2回目の開催にも意欲を見せた。


多くの少年少女に野球の楽しさを知ってもらいたい――。

そんな思いから、手作りの「ベースボールアカデミー」を、ある高校の野球部員たちが開いた。

野球界の未来のために。笑顔にあふれた1日を紹介する。

そのグラウンドからは、新宿の「タカシマヤ タイムズスクエア」が見える。

東京都立新宿高校の硬式野球部は、1、2年生合わせて選手14人に女子マネジャー2人。

2月3日、計16人の部員の前に、50人ほどの小学生が集まった。

新宿、四谷地区などで活動する五つの少年野球チームの子供たちだ。

新宿高校の部員が言う。「じゃんけんでチームを分けよう!」。

六つのチームに分かれた子供たちは、野球と似ているが野球よりも簡単なゲームで球児たちと交流した。

例えば、「並びっこゲーム」。

打者はティー打撃用のスタンドに置かれた球をバットで打ち、一塁ベースに見立てたコーンまで走ってターンして本塁へ戻ってくる。

守備側は球を拾うと、全員がその場に集まって手をつなぎ、「アウト!」と叫ぶ。

打者が先に本塁に戻れば1点、「アウト!」が先なら無得点だ。

止まっているボールだから空振りは少ないし、守備側は1プレーごとに集まらないといけないから、一つのプレーに全員が参加できる。

アウトカウントは数えず、全員が打ち終わるまで攻撃が続いた。

約1時間半の野球遊びが終わると、校内へ移動。

後半は小学生が持参した国語や算数のドリルに取り組み、分からなければ、高校生に質問した。

こうした子供向け以外にも、保護者や指導者向けに専門家による栄養講座、理学療法士による「けが予防の講習会」や女子マネジャーによる「スコアの付け方講座」も並行して行われた。

足立区から参加した飯塚空翔君(小学2年)は「高校生は優しくてかっこよかった。ヒットをいっぱい打てて楽しかった」と目を輝かせた。

こんなイベントを高校の野球部が単独で開くのは、全国的にも珍しい。

WS000000新宿高校野球部の田久保裕之監督(36、新宿高校出身)が企画した経緯を語る。

「我々が当たり前のように高校野球をできるのは、少年野球があるから。なのに、少年野球に対して、何も恩返しができていないと思ったんです」

言葉の背景にあるのは、野球人口の減少への危機感だ。

例えば中学生の軟式野球人口は、少子化のスピードの約8倍のペースで減っていると言われる。

単純に「少子化のせい」だけでは片付けられない。

田久保監督は参加した子供たちや保護者にこう語りかけた。

「野球をしていない友達に、楽しさを伝えてほしい」。

これがアカデミーの最大の狙いだった。

今はもう、大半の男の子が近所で野球をしたり、キャッチボールをしたりする時代ではない。

多くの野球人が野球界の未来に漠然とした危機感を抱いてはいるが、具体的な行動に移せずにいるのが現状だ。

「野球ができる、試合ができるのは当たり前じゃないんです」と田久保監督。

田久保監督自身、部員100人を超える小山台高校から新宿高校に移り、危機感を強めたという。

もちろん、新宿高校野球部も真剣に甲子園を目指しているが、田久保監督はこうも言う。

「高校野球は閉鎖的なところがある。

ずっと練習ばっかりやって、それでころっと負けたときに何が残るのか?

今回、アカデミーを生徒たちに取り組ませてみて、想像以上の準備をしてくれた」。

練習では見られない部員たちの成長を感じ取り、「アカデミーをやったことが間違いなかったと確信できました」。

誇らしげに部員たちを見つめていた。

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す