漢詩を読む(2)

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10月に「漢詩を読む(1)」という記事を書いて、3冊ほどご紹介しましたが、また新しい漢詩の本を入手しました

佐久協「ビジネスマンが泣いた「唐詩」100選」

先の3冊よりも、もっと超初心者向けの漢詩入門書

本書の売りは、最近の口語っぽい日本語に訳していること

古典をカジュアルな現代語に訳すというのは

橋本治「桃尻語訳 枕草子」

なんかが有名で

「春って曙(あけぼの)よ!

だんだん白くなってく山の上の空が

少し明るくなって

紫っぽい雲が細くたなびいてんの!」

みたいに、清少納言を渋谷のGALにしちゃったりする

本書でも、例えば、李白「両人対酌」(「山中与幽人対酌」第一節)

両人対酌山花開

一杯一杯復一杯

我酔欲眠卿且去

明朝有意抱琴来

これを次のようにくだいて訳す

おい、君の顔は山の花が開いたみたいに真っ赤だぞ

とったり、やったり、よく飲んだよなぁ

おれはちと横になりたいが、君は一人で帰れるか?

二日酔いでなければ 琴を持って明朝また来いや

気のおけない親友との関係がにじみ出てますね

この「酔うと眠くなる」という感じ、最近の私はすごくよく分かる!

通常の書き下し文では

両人対酌すれば 山花開く

一杯一杯 復(ま)た一杯

我 酔いて 眠らんと欲す

卿(きみ)且(しばら)く去れ

明朝 意有らば 琴を抱いて来たれ

「一杯一杯復一杯」って、サントリーのCMにあったような

まあ、2種類の訳のどっちが良いかは人それぞれ

私はこれから、100個の漢詩について、固い訳とくだいた訳を読み比べたいと思っています

書名に「ビジネスマンが泣いた」とあるのは、本書第1章の表題が「サラリーマン人生」になっているように、ビジネスマン(サラリーマン)の悲哀に通じるような漢詩を積極的に取り上げているからでしょうか

科挙の伝統が長い中国は、科挙に合格した官僚(サラリーマン)が、社会の実権を握ってきました

官僚は組織ですから、左遷されたり、上司と衝突して職を辞したり、いろいろあって、その鬱屈した気分を歌った漢詩は多い

失業したり、閑職にまわされたりすると、ヒマだけはタップリがあるので、酒を飲んだり詩を作ったりして憂さを晴らすことになる

藤原道長の和歌

この世をば わが世とぞ思ふ 望月の

欠けたることも なしと思へば

みたいな、成功者の勝ち誇ったような漢詩は少ない

まあ、あったとしても、そんな詰まらない歌は嫌われるから、漢詩の長い歴史の中で消えていったということかもしれません

中国人は社会の実権を官僚が握って、官僚民族になった

インド人は社会の実権を宗教家(バラモン)が握って、宗教民族になった

日本人は武士政権が長かったので、割と戦闘民族の体質があるような気がします

戦後80年が過ぎて、日本人は自分たちを平和民族と思っていますが、海外からは

「ハラキリ(切腹)」

「カミカゼ(特攻隊)」

のイメージで見られているような気もします

確かに日本人には「ふだんは温厚だが、怒らせたら恐い」というイメージもある

いま、おとなりのC国の横暴に対して、怒っている日本人が多いなぁと感じます

本書の著者の佐久協さんは、慶応高校の国語の先生だった人で、その授業は生徒から絶大な人気だったそうです

今日は満月、李白の「月下独酌」のように、月を歌った漢詩も多いですねぇ

(^_^;)~♪

 

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