書名に惹かれて読み始めたが、日本中世史の専門的な論文を集めた本で、素人には読みにくいこと夥しく、かなり飛ばし読みになった
検非違使(けびいし)とは、中世における警察や裁判を扱った役所のことを言うのだが、その中の重要な役目として「ケガレ(穢れ)」を清める仕事の統括があった
例えば天皇がどこかにお出かけ(行幸)するときは、すべての道や宿を清める(清掃し、ケガレをはらう)必要があり、これも検非違使の重要な職務だった
この時代の「ケガレ」とは、まず第一に死であって、死人の出た家は一定期間「ケガレた場」とされ、家族も「ケガレた者」として公的な場への出仕が一時的に止められる
「ケガレ」とは、一種の伝染病のようなものと考えられていたようだ
現在でも、家族が亡くなると学校や会社を休んで喪に服したり、葬式から戻ると清めの塩をまいたりするのは、この習慣の名残りだろう
人間や動物の死体は「ケガレ」た存在なので、やがてこれらを直接的に手を下して扱い、さらに清める専門職が登場し、「非人」と呼ばれる特殊集団を形成する
最も清い存在である宮中では、特に「ケガレ」を極端に忌避したので、「非人」の活躍する場も多く、ここに天皇と非人の特殊なつながりが形成された
書名は「検非違使」だが、主たる内容は中世における非人社会の在り方とその変遷であって、実に微に入り細にわたる検討が加えられている
歴史の専門家が学会などで、どんな議論をしているのかが見えてくる(非常に読みにくくて、参っちゃうけど)
当初は畏怖され特権を有する専門職だった「非人」だが、やがて「ケガレ」の概念が肥大化し、埋葬、屠殺、革細工などなど、非常に広範な仕事が「ケガレ」た仕事として、特に江戸時代に差別の対象になった
現代でも度々政治問題化する被差別民だが、その起源は古代・中世にまで遡る
「ケガレ」を嫌う傾向は、現代の日本人にも脈々と生きていて、世界一清潔な生活習慣となって表れている
中国コロナで、みんな一斉にマスクをするようになったことも、関係があるかもしれない
東北地方のある県では、東京から帰省した人を「ケガレた民」として忌避し、「帰れ!」「出て行け!」と罵る「正義の人」まで登場している
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