多摩センター 乗客争奪戦

小田急線と京王線のホームが隣り合う「多摩センター駅」。

多くの住宅やマンションが立ち並ぶ多摩ニュータウンに住む人は、どちらかを選んで通勤・通学している。

同じ「多摩センター」の駅名を持ち、列車が目指す目的地も同じ「新宿」。

1970年代、ほぼ同時期に京王相模原線と小田急多摩線がこの地に乗り入れた。

それ以来、“乗客争奪戦”が起こるのは必然的ともいえる環境だ。

お客さんの声

「京王派です。本数が多いですね」(京王派の乗客)

「小田急はめったに乗らないです。(新宿から)1本で乗り換えなしで来られるので。座って寝られたので便利だなと思いました」(京王派の乗客)

「(直通している)千代田線を使うからですね。小田急は速くなった気がします」(小田急派の乗客)

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 大いに競争して

  便利になって欲しい  (^_^;)

乗客争奪戦のカギを握るひとつのチャンスは、毎年やってくる「新年度」。

多くの人が新しく通勤・通学を始めたり、定期を買い替えたりする時期だ。

1日の乗降客数で見ると現在は京王がリード。

小田急はいかにしてこれを巻き返すのか。

この春も、多摩センターをめぐる熾烈な争いが始まっている。

京王は「座って家に帰れる」新型車両を導入

新年度を前に、先に仕掛けたのは京王。2月から、夜の帰宅時間帯に有料座席指定特急「京王ライナー」の運行を始め、「座って家に帰れる」ことを最大限アピールする。

「もともとお客様からの『座って帰りたい』というニーズがありましたので、それに応えることで、お客様の満足度の向上や京王線の利便性の向上が図れると思っています」(京王電鉄広報部・池田洋さん)

京王ライナーに投入されるのは新型車両。全席でコンセントが利用できるなど、快適性も抜群だ。さらに、ダイヤ改正によって朝の時間帯でも運行時間が短縮されるなど、大幅な利便性向上が実現している。

「(4月は)新しいお客様がいらっしゃるので、非常に重要な時期。加算運賃の引き下げや京王ライナー、ともに相模原線に関わることですし、多摩ニュータウン地域のお客様の利便性は非常に高まると考えています」(同)

小田急は「複々線化」で混雑緩和と所要時間短縮

通勤ライナーを投入するという大胆な策に出た京王。これに対し、小田急は「ダイヤ改正による利便性向上」で挑む構えで、切り札は「複々線化」だ。

小田急では3月3日、代々木上原駅から梅ヶ丘駅までの間で、上下線の線路を2本ずつにする「複々線化」が完了した。長い年月をかけた難工事の末に完成した複々線によって、大幅な混雑緩和に加え、多摩センター~新宿間の所要時間は14分も縮まった。(ラッシュピーク時)

「(一部区間の)複々線化が完成したことで、今回のダイヤ改正となりました。複々線化によって各駅停車と急行が別々の線路を走るので、所要時間が短縮される効果があります。構想50年、着工から30年ということで大変お待たせしましたが、この悲願が達成されたことが今回のダイヤ改正につながっています」(小田急電鉄CSR・広報部の山口暢一さん)

このほかにも、小田急多摩センター駅の始発列車を新設したり、始発の繰り上げや終電の繰り下げを行ったりするなど、多摩ニュータウンのニーズを意識したダイヤ改正で勝負する。

「都心方面への輸送サービスを大きく改善しているといっても過言ではないと思います。多摩市民を含め、このエリアからの通勤・通学やお買いものの時にご利用いただけるように、快適でスピーディーな小田急線をご利用いただきたいと考えております」(同)

企業間競争が地域全体のメリットに

新年度を前に、新規乗客の獲得を目指す京王と小田急。両社ともに激しい乗客獲得争いを繰り広げてはいるものの、ともに目指す目標は地元・多摩ニュータウンの活性化。地元の活性化が進めば当然、全体的な乗客数の底上げも望める。

「駅周辺には京王グループのホテルなどもありますし、当社にとって重要な駅だと考えています。多くの世代の方に住んでいただいてこそ町の活気が出ると思いますので、そうなれるように京王グループとして努力していきたいと考えています」(京王電鉄・池田さん)

「いろんな地域の活性化に関しては、鉄道会社として取り組んでいかなければいけない。その中のひとつとして、多摩地域の活性化という部分にも寄与できれば、このダイヤ改正が生きるのかなと考えています」(小田急電鉄・山口さん)

専門家もこうした企業間競争が、高齢化が進む多摩ニュータウンをはじめとした地域全体のメリットにつながると指摘する。

「80年代、バブル期の頃はものすごい倍率の抽選で当たった人だけが、(多摩ニュータウンに住宅を)買えるという時代もあった。ただ、その当時買った人たちも30~40年経ってきて、結果的に老齢化が進んでいるという現実がある。そんな中で、どんどん新しい人が入って活性化しなければいけないが、若い人たちは交通利便性の面で(多摩ニュータウンを)敬遠する傾向もある。どんどん通勤時間に対するニーズが強まってくる中で、多摩ニュータウンのプライオリティーが落ちている。沿線の価値が上がれば不動産価値も上がっていくので、輸送能力が一番大きなポイント。そういった面では、小田急さんも京王さんも頑張ろうということ」(不動産コンサルティング・トータルブレインの杉原禎之専務)

小田急と京王、両社の公共交通機関としてのサービス向上も期待されるが、地元活性化の担い手としても大きな「使命」を担っているといえそうだ。

(AbemaNewsより)

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