7月8日、夏の甲子園の予選となる高校野球の東・西東京大会が開幕する。
都立新宿高校を率いるのは同校OBの田久保裕之さん(35)。
かつて「学生監督」として同校を指導したが、今春の異動で今度は教員監督として母校に戻ってきた。
長年の夢がかなった田久保さんは、後輩とともに、チーム目標の3勝を目指す。
「オラーッ、もう一球~!」「リズム、リズム!」。
新宿御苑と新宿タカシマヤが間近に見える新宿高校のグラウンドに、田久保さんの大声が響き渡る。
田久保さんは2000年に同校を卒業すると「母校の体育教師になりたい」と、日本体育大に進学。
すぐに新宿高校の野球部監督になり「学生監督」として注目された。
その後、念願の教員になり、10年に小山台高校の助監督に就任。
チームは14年春のセンバツに、21世紀枠で出場を果たした。
今年3月末、母校への異動が決定。
小山台の大田原弘幸校長から「みんなが母校に行きたいが、実現するのは一握り。チャンスを逃すな」と背中を押された。
現在は1年の担任と体育教諭として勤務しながら、野球部で監督を務める。
東大野球部で活躍し中日球団代表も務めた新宿高校OB井手峻さんを外部コーチに迎え、小山台時代に学んだ狭いグラウンドで効率良く練習できるメニューを取り入れるなど、早くも手腕を発揮している。
田久保さんは「自分は日本一幸せな教員。夏の大会は、3年生と同じ最後の夏という気持ちで臨む」と意気込む。
主将の吉田壮吾さん(18)は「田久保先生は、僕たちが野球だけに集中できる環境を整えてくれる。『都立だから』という言い訳が、いい意味で通用しなくなった」と喜ぶ。
マネジャーの高安柚奈さん(18)も「元々、OB総会などで知っていたので、最初からなじんでいます」と、歓迎している。
新宿高校は7月9日、郁文館と対戦する。
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5月から、OBで中日元球団代表の井手峻氏が外部コーチとして招聘(しょうへい)された。梅原は「最後の大会なので自分以外投げさせないという気で投げました。井手さんから『気負う必要はない』と言われたことを思い出して落ち着いて投げられました」と言った。今春から母校に戻った田久保裕之監督は「3年生がよく頑張った。梅原の気迫の守りは、後輩たちにしっかりメッセージとして伝わっているはず」と話した。