日本に住んでいるとピンと来ませんが、日本以外の国で地震や津波などの自然災害があると、その後に略奪や暴行といった「人災」が続くことが多いようです。
海外に旅行している間に自然災害に遭遇した場合、天災だけでなく人災への備えも必要になります。
平和ボケで防衛本能が低下している上に土地勘もなく、現地の人から見たら「お金持ち」の日本人は、略奪や暴行のターゲットになる危険性が高いです ((((;゚д゚))))
インドネシアでは毎日のように地震が起きるが、スラウェシ島中部パルを襲った揺れと津波の規模は地元住民にとっても科学者にとっても想定外だった。
9月28日に発生したマグニチュード(M)7.5の地震と津波による死者は、これまでに少なくとも840人が確認されたが、最終的な死者は数千人におよぶ恐れがあると政府は言う。
複数の科学者はBBCに対して、地形やタイミング、事前警報が不十分だったことなどが合わさって、パルの被害は「最悪のシナリオ」とも呼べるものになってしまったと説明した。
首都ジャカルタとスラウェシ島は、東京沖縄間くらい離れています (^_^;)
地震は地球の地殻変動によって起きる。プレートがこすれ合ったり、互いの下に潜ったりするのが原因だ。この現象は始終起きているが、動きが大きかったり、人口密集地に近かったりすると、甚大な被害をもたらすことがある。
28日を通じてパルでは細かい揺れが続いていたが、午後6時過ぎにパル・コロ断層がいきなりずれた。震源は海岸から近く、深さわずか10キロで、M7.5の規模の揺れを引き起こした。
1995年からパル・コロ断層を研究してきたバンドン工科大学のハムザ・ラティーフ博士によると、パルは厚い土砂の断層の上に位置しており、これが揺れの影響を拡大させたと話す。
地震の際に岩盤は振動するだけだが、土砂層は液体のように大きく動く。もろい造りの建物はひとたまりもない。
「泥を運んで造成した埋立地は、岩盤と比べてもろい。どこでも同じだ」と、インドネシアに詳しい米国の地質学者、ジェス・フィーニックスさんはこう説明する。地震については「それが気にすべき点だ」とフィーニックスさんは言う。
「少なくとも津波については、パル・コロ断層は通常ならあまり注目されない」と、シンガポール国立大学のフィリップ・リュウ・リファン教授は言う。
なぜなら、通常なら縦ずれ断層の方が津波が発生しやすいが、パル・コロ断層は横にずれているからだ。
「何が実際に起きていたのか、突き止めようとしている」とリュウ教授は話す。
可能性としては、地震によって海底で地滑りが起きて海水を動かしたことも考えられるが、断層の解析が不正確だった可能性もあると教授は言う。「まだよく分かっていない」。
しかし、波がいったん動き始めれば、長さ10キロの狭い入り江の奥に位置するパルは、なす術もなかった。
岸から遠い沖にいる間は津波はさほど危険ではないが、波が陸に近づくと海底の土砂を巻き上げる。
フィーニックスさんはツイッターで、「波は振幅(揺れの上下運動)と周波数(波の間隔)で計る。海洋上の津波は低振幅で低周波だが、時速965キロで移動することもある! 波が岸に近づくと、海底はどんどん浅くなる。それが危険だ」と書いた。
地震発生から短時間の間に、3つの波がパルに到達した。
フィーニックスさんは、地形と波の到達の速さがあいまって「つまり最悪のシナリオ」になったと話す。
「パルの入り江のようなU字型の地形の中に波が入り込んでくる場合、単に海が浅くなるに伴い波が高くなるというだけでなく、波が周りの海岸線からはねかえってくるすり鉢状態になる」
バンドン工科大学のラティーフ博士によると、パル周辺は以前にも津波被害を受けている。入り江の入り口では高さ3~4メートルだった波が、パルに到達した時点では8メートルに達していたという1927年の記録が残っているという。
少なくとも約25万人が死亡した2004年のインド洋大津波の後、早期警報システムの確立に巨額の資金が投入された。
周辺一帯に設置された複雑なセンサー・システムを使い、地震が津波発生につながるのか専門家が判断し、住民に高い場所への避難を勧告できるように、仕組みを整えたはずだった。
インドネシア政府の国家災害防災庁によると、国の津波警戒にとって主要な要素だった海底センサーと連結したブイ観測網は、2012年以来、機能していなかった。担当者は、予算不足が原因だと説明した。
リュウ教授は、警戒システムは「機能しているともしていないとも言える」と話す。インドネシア政府の防災対策は主に、2004年に甚大な被害を受けた国の南部に集中してきたのだという。
今回の地震の後、津波警報は発表された。ただし、「警報の内容が正しく実践されたか、住民の耳に届いたかなど」の検証が待たれるとフィーニックスさんは話す。
海水がいきなり海岸から引いていく光景を眺めようと海岸に留まった人が、続いて押し寄せる波の犠牲になることは珍しくない。2004年のインド洋大津波以来、引き波を見たらただちに海とは逆の方向に走るよう、被災地の政府は住民教育に力を入れてきた。
BBCインドネシア編集長のレベッカ・ヘンシュキ記者が取材した男性は、海水が消えるのを目にしたため、家族を高い場所に走らせ、自分は近くにいた子供をつかんで木にしがみついたと話していた。
それでも、パルの海岸の周りには大勢の人が残っていたようだ。お祭りの準備をしていた人も多い。
「あの土地の人たちは、津波の威力をよく知っている。海辺で犠牲者が出たとしても、避難しようとしていたと思いたい」
「しかし高さ10メートルの波は、本当にかなりのものだ。ごく短い時間で全員を避難させるには、避難経路を相当はっきり表示していなくてはならない。インドネシアで調査した自分の経験では、避難ルートはことさらに明示されていなかった。パルそのものがどうだったかは承知していないが、大勢を素早く避難させるのは本当に難しい」