▲2013年 尾道にて 左が小川響子さん
ドイツ南部ミュンヘンで行われているドイツ公共放送ARD主催の
第67回ミュンヘン国際音楽コンクールで15日、ピアノとバイオリン、チェロによる三重奏部門で東京芸術大学の大学院生と卒業生の3人が結成した「葵トリオ」が1位になった。
同部門で日本からの入賞は初めて。
奈良県橿原市出身の小川響子さん(26)がバイオリン、同県生駒市出身の伊東裕さん(26)がチェロ、兵庫県西宮市出身の秋元孝介さん(25)がピアノを演奏。
シューベルトの曲などを熱演し、会場を沸かせた。
決勝は3組で競われ、葵トリオを除く残りの2組はともに3位になった。
2018.7.1
東京藝術大学と、ベルリン・フィルハーモニー・カラヤン・アカデミーとの人材育成に係る協定に基づき、スズキ出身のヴァイオリニスト、小川響子さん(塩谷峰子先生クラス出身)が同アカデミーへ、今年の秋から2年間、派遣されることになりました。
7月3日に東京藝術大学音楽学部第1ホールで行なわれたオーディションで決定したもので、こうした仕組みは世界初の試みです。
今後は、毎年、東京藝術大学卒業のヴァイオリニストが1名、派遣されることになるそうです。
審査員長は、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の第1コンサートマスターとして活躍される樫本大進さん。
もともと樫本さんに憧れを持っていたという小川響子さんにとって、素敵なオーディションになったようです。
早速、ご本人と塩谷峰子先生にお話を伺いました。
小川響子さんのメッセージ
「まさか、自分があのベルリン・フィルに行けるはずがない…」という気持ちでしたので、親にさえ受けることを言わないまま、オーディションを受けました。
ですので、まだ実感が湧かず、信じられない気持ちです。
また、私は語学が大変苦手で、コミュニケーションをとることができるのか、生活していけるのか、不安な気持ちでいっぱいです。
しかし、せっかくいただいたチャンスなので、恥ずかしさを捨て、体当たりで2年間がんばってきたいと思います。
そもそもオーディションを受けたのは、藝大での初めての試みということでしたので、大学時代に習っていた先生より、「オーディションを受けてみないか」というお話があり、応募しました。
審査委員長の樫本大進さんは、もともと大ファンで、ベルリン・フィルのコンマスになられた時に新聞記事を部屋に貼っている、そんな存在でした。
オーディションでお姿を拝見して、「あ!本物の樫本さんだ!」という心境でした。
課題曲はモーツァルトの協奏曲と、ロマン派の協奏曲全楽章でしたので、私はモーツァルトの協奏曲第4番と、チャイコフスキーの協奏曲を選曲しました。
これからの2年間について、詳細がまだよく分かっておらず、正確なことはお伝えできませんが、ベルリン・フィルの団員さんにレッスンを受けたり、アカデミー生同士で室内楽をしたり、ベルリン・フィルの演奏会に乗らせていただいたりするというお話を伺っています。
スズキ・メソードの思い出は、やはり毎年行っていた夏期学校です。
私は一人っ子でしたので、歳の近い人たちと一緒にお風呂に入ったり、花火をしたり、練習をしたり、遊んだり、というのがとても新鮮で、特別なことでした。
塩谷峰子先生のクラスは母子ともにとても仲が良くて、今でもその頃のお母様方がコンサートに来てくださったりしており、本当に良いご縁に恵まれたと思っています。
松本のキッセイホールに行くと、あの頃の空気感やワクワク感を今でも思い出します。
また、小学2年生の時に北海道へ選抜していただいて行ったことも大変よく覚えております。
その時に一緒だった名古屋支部でチェロ科の黒川実咲さんとは、その後、奇跡の再会を果たし、今「クァルテット奥志賀」として一緒に演奏しております。
塩谷先生は、いつもとても熱心にご指導くださり、私にヴァイオリンを弾く楽しさ、音楽の素晴らしさを幼い時から教えていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。
一番印象に残っているレッスンは、卒業演奏会前に、なんとお電話ででもレッスンをしていただいたことです。
今、スズキ・メソードで学ばれている皆さんにお伝えしたいことは、私自身、まだまだできていないことですが、自分が弾いている曲以外にも、たくさんの音楽を聴いて、室内楽や交響曲、バレエやオペラなどを見たり聴いたりして欲しいなと思います。
また、スズキで出会う仲間は、一生のお友達になれると思うので、大切にしてほしいなと思います。
▲樫本大進氏、小川響子さん、東京藝大の澤学長
塩谷峰子先生のメッセージ
⇐2008年の夏期学校「協奏曲の夕べ」に出演された小川響子さん
響子さんは、5歳2ヵ月の時に入会しました。
毎週水曜日がレッスン日でしたが、午後3時からのレッスンが終わってからも、午後9時までずっと教室で見学をしているような生徒さんでした。
小さな間違いも許さない厳しさを持ちながらも、どこまでも謙虚なお人柄です。
中学時代の夏休みに電話をするとおけいこしていたとのこと。
「いつから弾いてたの?」の問いに「朝からです」「いつまで弾いているの?」「夜までです」という答えが返ってくるほど、ヴァイオリンが大好きなんです。
夏休みは毎日1日中おけいこしていました。
研究科B、研究科Cともに代表に選ばれ、グランドコンサートと一緒に行なわれていた卒業式で豊田会長から賞状をいただきました。
また、2008年の夏期学校の「協奏曲の夕べ」では、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を夏期学校オーケストラと共演し、機関誌にも写真が掲載されたことがあります。
また、2002年の夏期学校の「午後のコンサート」では、バッハのドッペルの第2、第3楽章を演奏しています。
今回の快挙は、とても嬉しく思いますし、今も奈良あすか支部に所属してくださっているほど、ご自分の原点を大切にされています。
これからもずっと応援していきます。
東京藝術大学のプレスリリースなどは、下記でご覧いただけます。
→東京藝術大学プレスリリース
→東京藝術大学の公式サイト
小川響子さんプロフィール
奈良県橿原市出身。
第10回東京音楽コンクール 弦楽部門第1位、及び聴衆賞を受賞。
ザルツブルク=モーツァルト国際室内楽コンクール2015第1位。
デザインK国際コンクール二重奏部門第1位、グランプリを受賞。
バンフ国際弦楽四重奏コンクール2016にて、Career Development Awardsを受賞。
これまでに東京交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団をはじめ、オーケストラと多数共演。
また、アンネ・ゾフィ・ムター氏、小澤征爾氏、大友直人氏、梅田俊明氏、西本智美氏らとソリストとして共演。
サイトウ・キネン・オーケストラに最年少メンバーとして参加。
東京・春・音楽祭、ラフォルジュルネ・オ・ジャポン、セイジ・オザワ・松本フェスティバル、サントリーホール・チェンバーミュージックガーデンなどの音楽祭に参加するなど、ソロ、室内楽、オーケストラをはじめとする様々な分野で積極的に活動している。
また、文化庁派遣事業にて保育園や学校でのアウトリーチ活動も積極的に行なっている。
東京藝術大学大学院修士課程をこの春卒業し、東京フィルハーモニー交響楽団第1ヴァイオリンのフォアシュピーラーとして在籍中。
これまでに塩谷峰子、西和田ゆう、漆原朝子、松原勝也、堀正文、原田幸一郎の各氏に師事。
サントリーホール室内楽アカデミー 第3期、第4期フェロー。
2017年度ヤマハ音楽支援制度奨学生。
クァルテット奥志賀、レイア・トリオヴァイオリン奏者。