Googleがひそかに開発しているOS「Fuchsia」は、5年以内にAndroidを置き換える可能性があることが関係者からの情報でわかったとBloombergが報じています。
モバイルOSの約80%を占めるAndroidをFuchsiaに変更するメリットとデメリットは以下の通りです。
Project ‘Fuchsia’: Google Is Quietly Working on a Successor to Android – Bloomberg
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-07-19/google-team-is-said-to-plot-android-successor-draw-skepticism
2016年にFuchsiaの存在が明らかになった当初は、IoT向けのOSとして開発されているとみられていました。
Googleの新OS「Fuchsia(フクシア)」はLinuxベースではないIoT向けの組み込み用OS – GIGAZINE
しかし、Fuchsiaの開発に携わる関係者の話から、FuchsiaはIoTだけでなくスマートスピーカーやスマートフォン・タブレット、ノートPCにいたるまですべての端末のベースOSとしての役割を果たすことが目指されているとのこと。現在モバイルOSとして圧倒的なシェアをもつAndroidに加えてノートPC向けのChrome OSやGoogle Assistantアプリなどをすべて統合する旗艦OSとなることが期待されています。
Googleがすでに支配的な地位を築いたAndroidを捨ててまで、新OSの開発を進める理由はいくつか考えられています。まず、Androidの機能的制限がその一つ。ディスプレイとタッチ操作を前提として開発されたモバイル端末向けOSのAndroidは、音声コマンドなどが設計段階で想定されていたわけではありません。今後、スマートスピーカーやIoT端末などで操作方法として有力だと考えられる音声制御に焦点を当てた新OSとしてFuchsiaを一から開発するというメリットがあります。
また、ライバルのiOSとの比較で、Androidは最新バージョンへのアップデートがなかなか進まないという問題を抱えています。これは、OSアップデートがAndroid端末を製造・販売するハードウェアメーカーに委ねられているところ、新規端末を販売したいハードウェアメーカーにとって旧端末のOSアップデートがAndroid端末を製造・販売するハードウェアメーカーに委ねられた結果、新規端末を販売したいハードウェアメーカーにとって旧端末のOSアップデートを行うインセンティブがないため取り組みが消極的であることが原因です。この教訓をいかして、Googleはまったく新しいOSであるFuchsiaを導入することで、ハードウェアメーカーや通信事業者からOSアップデート権を取り戻せるというメリットがあります。なお、IoT端末をサポートするという構造上、GoogleはFuchsiaでは常時ネット接続を前提として常に最新版を提供するChrome OSのような機能を持たせるとも予想されています。
Android OSはLinuxカーネルをベースにしており、OracleとのJavaに関する特許侵害訴訟は長年、Googleにとって厄介な問題となっています。「Zircon」と呼ばれる別のカーネルを利用するFuchsiaによって、Oracleとの特許係争を回避できることはGoogleにとってメリットになります。
Googleに1兆円の損害賠償請求したOracleが控訴審で逆転勝訴 – GIGAZINE
もっとも、すでにAndroidで築き上げた「資産」を手放すことはデメリットにもなり得ます。Samsung、Huawei、LGなどのAndroid端末メーカーが直ちにFuchsiaに乗り換えることは現実的でなく、移行を進めるプロセスが必要です。また、FuchsiaがChrome OSの後継OSとしての役割を持つならば、教育用ツールとして大きなシェアを持っているChromebookユーザーの乗り換え作業も困難な問題として立ちはだかりそうです。
Bloombergが関係者から得た情報によると、AIスピーカー、ノートPC、スマートフォン、IoT端末、自動車端末などあらゆる端末をサポートするFuchsiaプロジェクトについて、まだサンダー・ピチャイCEOなどの重役からのGoサインは出ていないとのこと。しかし、FuchsiaプロジェクトではAIスピーカーなどの音声制御された家庭用端末向けOSとして3年以内にリリースされ、その後、ノートPCなどに向けてもリリースし、最終的には今後5年でAndroidを置き換えることが目指されているそうです。