水戸のパイプオルガン復活

 

▲水戸芸術館(水戸市)

 

東日本大震災で被災した水戸芸術館(水戸市)のパイプオルガンが約1年ぶりに復活し、4月1日、入場無料の記念コンサートが開かれた。

待ちわびた荘厳な音色を味わおうと、同館のコンサートでは最多の約1800人の観客が詰めかけた。

震度6弱の揺れを受けた水戸芸術館のパイプオルガンは、金属や木のパイプがぶつかり合い、3283本のうち9割以上が傷ついたりへこんだりした

正面にあった5本の大きなパイプは、1階ロビーまで落下して折れ曲がった。

ようやく修繕が始まったのは、昨年11月。

製作会社の「マナ オルゲルバウ」(東京都)の社長、松崎譲二さん(65)と中里威さん(63)ら職人6人が、約3か月かけて損傷したパイプに1本ずつ鉄の棒を差し入れてしごき、今年1月下旬からは整音と調律を繰り返した。

重厚感と丸み、壮麗さを備えた「音」を、記憶の中に探る。わずかな形状や室温の違いによって、音程は微妙に狂う。

職人たちは毎週平日の開館前や閉館後、静まりかえった冬の館内で暖房を切り作業を続けた。その姿は広く県民に知られるようになった。

この日は、開演1時間前の午後12時半に用意された200席が埋まり、コンサートが始まると会場の1、2階エントランスホールは立ち見の観客であふれかえった。

オルガニストの浅井美紀さんがバッハなど4曲を次々に奏でる。多くの観客が目を閉じながら体を静かに揺らす。

アンコールで滝廉太郎作曲「花」など2曲が始まると、メロディーをハミングする声が会場を満たした。

パイプオルガンを最後に、同館は完全復旧を迎えた。

水戸市上水戸、医師佐藤智子さん(37)は「パイプオルガンにもようやく春が来たんだと実感して、涙がにじんだ。これをきっかけに水戸の復興も勢いづいてほしい」と感激していた。

これまでの日々を振り返り、あいさつに立った松崎さんは「オルガンは生き物。これからもたくさんの人に弾いてもらって育っていってほしい」と聴衆に語りかけていた。

 

▲パイプオルガンを背にあいさつする奏者の浅井さん

 

水戸芸術館

茨城県水戸市五軒町 1-6-8 TEL. 029-227-8111

 

(^_^;) 震災前の繁栄が少しずつ戻ってくる

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す