今から60年前、1961年初頭に行なわれたケンブリッジ大学での講演を元にした本だが、まったく古さを感じさせない
難しい問題を平易な言葉で説明するという、イギリス人の長所がよく発揮されていて、非常に分かりやすい
歴史家と事実の関係
社会と個人の関係
歴史と科学・道徳の関係
歴史における因果関係とは
歴史における進歩とは
という、歴史を学ぶ(読む)者にとって避けて通れない極めて重要な論点について、非常に明解な説明を加えている
経営コンサルタントとしてクライアント企業の管理職にインタビューする際、目前の人物が語る内容だけでなく「この人は、なぜ今これを語ろうとしているのか?」という問題意識で聴けと先輩からよく戒められた
歴史家が史料に向き合う際にもこの精神が重要で、この史料を書いた人物は、どのような意図や動機で書いたのかを深く推理せよと戒めている
西洋中世はキリスト教の時代であるとされているが、当時の歴史史料を書く能力を有していた人々は、ほとんどが教会関係者であったことを意識しなければならない訳だ
何を史料(歴史的事実)として取り上げる(残す)かは、歴史家の評価(主観)であり、事実と主観は不断の相互作用の中にあり、これを称して「歴史は現在と過去との対話である」とする
他にも胸に響く名言が多数散りばめられた、歴史哲学の名著である
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