元国防長官のジム・マティス氏は、戦場においては敵を容赦なく叩きつぶす一方、平時においては無欲で目立つことを嫌い、軍人には珍しく、書斎での静かな読書と思索の生活を好むので、「軍人哲学者」と呼ばれています。
そのマティス氏が、ここまで言うのはよっぽどのこと。
日本のように天皇制があり、放っておいても社会が一つにまとまりやすい国とは違って、米国は種々雑多な人間の混合体なので、国家の「統合」を維持するために、過去も現在も、常に大変な努力を払っています。
こともあろうに大統領が、その「統合」を脅かす動きをしていると、軍人哲学者は考えているようです。
西郷隆盛「命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、始末に困るものなり。この始末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり」
トランプ米政権発足当初に国防長官を務めたジム・マティス氏は6/3、2018年の退任以降の長い沈黙を破った。
トランプ大統領は米国の分断を図っていると非難し、市民の暴動への対応に連邦軍を動員すべきではないと訴えた。
米国では5/25に、黒人のジョージ・フロイドさんが、白人警官に膝で首を押さえられて死亡した。
これをきっかけに、各地で抗議行動が続いており、一部で暴動化している。
マティス氏は米誌アトランティック(電子版)に掲載された声明で
「ドナルド・トランプは私の人生において、
米国民の結束に尽力しない初めての大統領だ。
尽力しているふりさえもしない」
「むしろわれわれを分断させようとしている。
3年に及ぶこの意図的取り組みの結末を、
われわれは目の当たりにしている」
と断じた。
マティス氏はまた、トランプ氏が6/1にホワイトハウスのそばにある教会を徒歩で訪れ、聖書を掲げ写真撮影に臨んだ際に、エスパー現国防長官が同行したことを批判。
この直前に州兵を含む治安当局が、平和的なデモ隊を排除していた。
エスパー現国防長官と米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長が、デモが行われている場所を「戦場」と呼んでいることについても、
「米国の都市を『戦場』とする、いかなる考え方も拒否すべきだ」
「ワシントンDCで見られたような連邦軍動員の対応は、
軍と文民社会の間に、誤った対立を生み出すことになる」
と述べた。