ストラディバリウスの音色

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バイオリンの中でも名器と呼ばれる「ストラディバリウス」と、現代に作られたバイオリンを試奏して、現代の楽器と古い名器は本当に音色が違うのかを調べる実験が2010年に行われました。

実験の結果、プロのバイオリニストたちがバイオリンを区別できなかったことから、

「1台数億円の高額なバイオリンは現代のバイオリンと大差なし

という判断が下されたのですが、この実験には問題があったとのことで、改めて2012年に新旧のバイオリンを比較する実験が行われました。

Blind-tested soloists unable to tell Stradivarius violins from modern instruments – The Strad
http://www.thestrad.com/cpt-latests/blind-tested-soloists-unable-to-tell-stradivarius-violins-from-modern-instruments/

2010年の実験では、プロのバイオリニストがストラディバリウスよりも現代のバイオリンに高評価を下したことから、研究者は「ストラディバリウスは現代 の楽器と大差ない」と結論づけています。

しかし、実験に参加したバイオリニストによれば、実験中に演奏者に求められたのは「どのバイオリンがいいと思うか を評価する」ことで、「バイオリンの年代を当てる」ことではなかった、と主張しています。

「現代の楽器と大差なし」と判断された貴重な楽器が持つ本当の価値とは – GIGAZINE


そ こで2012年に、改めてバイオリンの音色を聞き比べる実験がパリ・ヴァンセンヌの劇場で行われました。

今回の実験を率いたのは、音響学専門家でフラン ス人のクローディア・フリッツ氏、アメリカのバイオリン製作家のジョセフ・カーティン氏、弦楽器専門家のファン・タオ氏。カーティン氏は、「前回の実験の 問題は、少数のトップランクのバイオリニストだけが参加できたことと、彼らがあらゆる状況で楽器を演奏することに慣れていたため、実験がホテルの一室で行 われたことです」と語ります。

そのため、今回は演奏者としてプロバイオリニスト10人が招待され、バイオリンの数を前回の倍の12台に増やし、ストラディバリウス5台、18世紀イタリ ア製のバイオリン1台、そして現代の弦楽器製作家が作ったバイオリン6台が用意されました。

また、実験の実施場所は音楽用のリハーサル室とコンサートホー ルに変更され、演奏は2回に分けて75分ずつ行われました。

バイオリニストたちは「自分がコンサートで使うならどのバイオリンが一番いいか」を基準に12台のバイオリンを評価。

演奏中は、バイオリンを見た目で区別 できないようにするために、溶接工が使うゴーグルを装着して、舞台の照明が非常に暗い状態で実験が行われました。

用意された12台のバイオリンと、自分が 所持しているバイオリンを交互に演奏して比べるのもOKだったとのこと。

また、ピアノ伴奏の有無を選べたり、観客から演奏の感想を聞いたり、他のバイオリ ニストの演奏を聞くのも許可されていました。

1つ目の実験では、バイオリンを弾いて、「お気に入りのバイオリン4台を選び、気に入った順番に並び替える」「気に入らなかったバイオリンを指定する」よ うに指示されました。

実験者側ではこの結果を基に、それぞれのバイオリニストが最も気に入ったバイオリンに4ポイントをつけて、バイオリニストが気に入ら ないと判断したバイオリンは1ポイント減点されました。

実験の結果、現代に作られたバイオリンが合計26ポイントでトップを獲得。

このバイオリンは、4名のバイオリニストが「最も気に入ったバイオリン」と評価 していて、別の4名のバイオリニストが「2番目に気に入ったバイオリン」、2名のバイオリニストが「気に入らない」と評価していたもの。

一方で、最も評価 が低かったのはストラディバリウスで、点数はマイナス9ポイントでした。全12台のバイオリンをポイント獲得順に並べると、1位と2位は現代のバイオリ ン、3位は黄金期に作られたストラディバリウス、11位が現代のバイオリン、最下位がストラディバリウスだったとのこと。2010年の実験と同じく、現代 のバイオリンに高評価が下されました。

2つ目の実験は、バイオリニストたちが演奏終了後に「今弾いていたバイオリンは古いものか新しいものか」を30秒以内に判断するというもの。結果は正解が31回、不正解が33回、答えが曖昧だったのは5回でした。

この結果を受けて、実験を率いた3名の研究者は、「バイオリニストたちは、自分の好みのバイオリンと気に入らないバイオリンについてハッキリと区別するこ とができますが、バイオリンが作られた年代の区別については、偶然よりも少しマシ程度の正解率でした。

ストラディバリウス特有の音色を出すには、演奏者側 が豊かな演奏経験を積んでいる必要があります」と記しています。

カーティン氏は、「私にとって最も重要な発見は、バイオリニストたちが好みのバイオリンを 容易に区別できる一方で、ストラディバリウスと現代のバイオリンを区別できなかったということです。

つまり、トップクラスのバイオリニストが新しいバイオ リンを探す際には、バイオリンが作られた年代や国は全く関係ないということです」と語っています。

なお、以下のムービーから全ての実験の様子を視聴することができます。

2012 – The Paris Double-Blind Violin Experiment – YouTube

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