新宿高校 校長 戸田 弘美
○3月15日(火) 卒業式
前日の卒業式予行では入場練習や予行の後、体育優良生徒、文化活動優良生徒、都高校野球連盟、都公立高校ソフトボール連盟の表彰を行いまし た。続いて、皆勤賞の表彰を行いました。
3年間皆勤賞は18名でした。
どの表彰も、日々の努力の賜物です。高校時代の精進をぜひ、卒業後も続けて欲しいと 思います。
卒業式当日は、前日の雨模様が一転して、爽やかに晴れ渡り、卒業式日和となりました。当日の校長式辞を紹介させていただきます(冒頭の挨拶部 分はここでは省略いたします)。
ただいま卒業証書を授与しました、317名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、本校を卒業し、新しい世界へ旅立ちます。高校時代の三年間は、様々な学習やホームルーム活動、学校行事や、部活動に、全力をあげて取り組んできたことと思います。
六十八回生の皆さんの三年間を振り返るとき、まず思い出すのは、昨年の朝陽祭での見事な発表です。ダンスやミュージカル、演劇等、どれも秀逸 の出来で、質の高さに驚きました。演劇のレベルの高さには圧倒されました。また、お化け屋敷や食品のクラスも、丁寧で親切な態度で接しており、気持ちよ く、楽しめました。皆さんの発表からは、質の高さへのこだわりや、徹底的にやりきる、という情熱が感じられました。この「こだわり」が、実はとても重要な のです。無難に、そつなく行うことからは、新しい創造や飛躍は生まれません。限られた時間の中で皆さんが行った努力と、発表で得られた達成感は、かけがえ のないものになったことと思います。
また、昨年の運動会では、体育委員長を中心とした体育委員会が、生徒全員をリードする運動会を運営することができました。皆さんの先輩が築き 上げてきた、生徒による体制づくりが完成できました。私は、昨年七月のPTA会報で「感動体験が人をつくる」という文章を書きましたが、学校行事では皆さ んがリードし、「感動体験」を実現してくれました。
次に、皆さんが新宿高校で守ってきた目標の中から、「時間厳守」と「集中と切り替え」の二つについて述べたいと思います。新宿生ならだれもが 「時間厳守」、五分前行動を心がけ、三年間、体で覚えてきました。一方で「集中と切り替え」は、皆さんが毎日、文武両道を実践する中で、わが身に何度も言 い聞かせてきた言葉でした。新宿生は確かに忙しいです。しかし、皆さんが卒業後、高い目標を持てば持つほど、今後も時間との闘いは続きます。試練を積んで きた皆さんなら、必ず、乗り切れます。新宿での目標は、生涯の目標です。これからも大切にしてください。
さて、現代の社会は、急速に大きく変化しています。今年度の世界情勢を振り返ってみると、テロや難民の問題や、COP21による温暖化対策 等、地球規模で、大きな課題が山積しています。また、インターネットや人工知能等の進展により、現代は産業革命以来の新たな変革の時代とも言われていま す。時代の変化を的確にとらえ、対応できる人間が求められているのが、今という時代なのです。加えて、卒業生の皆さんは、今年の夏の選挙では有権者とし て、投票で政治に参加することになります。主権者である国民としての自覚をもち、臨んでくれることを期待しています。
ここで、時代の変化、にちなんで、「不易流行」という言葉を皆さんに送りたいと思います。江戸時代の俳人であり、「おくのほそ道」を書いた松 尾芭蕉が説いた言葉です。不易流行の不易とは、時が流れても変わらないということであり、流行とは、時の流れとともに変わるということです。芭蕉の弟子で あった去来は、芭蕉から学んだこととして、次の言葉を書き残しています。「蕉門に千載不易の句、一時流行の句といふあり。是を二つに分けて教え給えども、 その元は一つなり。」つまり、不易と流行は対立する概念ではなく、時とともに変化するが同時に不変である、という、両面を持ちあわせた概念、と言っている のです。もともとは俳句論ですが、自然や人生といった様々な概念が不易流行の二面性を持ち合わせています。変化の激しい現代社会において、時代の変化を的 確にとらえて、対応することが重要です。しかし、同時に、時を超えて変わらないことは何か、守っていくべきことは何か、を考えてみてください。視点を変え ることで、本質が見えてくることがあります。折々に、思い出してください。
卒業生の皆さん、夢を叶えるためのひたむきな努力を、これからも続けてください。そしてまた、季節の巡り、時の移ろいを楽しめる、心豊かな人 間になってください。結びに、本日ご多忙の中、ご臨席を賜りました、ご来賓の皆様、保護者の皆様に心よりお礼を申し上げ、式辞とさせていただきます。
(以上)
卒業式終了後には、たくさんの1,2年生が1階のホールに集まり、それぞれに、部活動等の先輩の卒業生を囲んで別れを惜しんでいました。
校長室に戻り、しばらくすると、ある卒業生が「新宿高校で良かったです」と言いに来てくれました。
皆、頑張り屋で心優しい、素晴らしい生徒たちでした。
卒業生 の皆さんの前途に、幸多かれと祈りました。