3月14日(土) 卒業式
前日の卒業式予行では入場練習や予行の後、体育優良生徒、文化活動優良生徒、都高校野球連盟表彰、都公立高校ソフトボール連盟表彰と皆勤賞の表彰を行いました。
3年間皆勤賞は23名でした。
どの表彰も、日々の努力の賜物です。
高校時代の精進をぜひ、卒業後も続けて欲しいと思います。
卒業式当日は、晴れて穏やかな風に春を感じる日和でした。
当日の校長式辞を紹介させていただきます(冒頭の挨拶部分はここでは省略いたします)。
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ただいま卒業証書を授与しました、310名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。
皆さんは、本校を卒業し、新しい世界へ旅立ちます。
高校時代の3年間は、様々な学習やホームルーム活動、学校行事や部活動に、全力をあげて取り組んできたことと思います。
皆さんの3年間を振り返るとき、まず思い出すのは臨海教室の復活です。
皆さんが入学した年の1年前にあたる平成23年3月11日、東日本大震災が起こり、多くの尊い命が失われました。
余震や放射能といった大震災後の様々な影響を考え、皆さんの先輩にあたる66回生の臨海教室は中止しました。
その後、翌年度から復活できないものかと対策を練っていました。
一日目に避難訓練を行うことや、浜から目の届く範囲で沖を周回する大遠泳のコースを設定するなどの準備を行い、実施に踏み切ることができました。
いよいよ臨海教室が始まり、三日目の大遠泳。
皆さんが沖を周回している最中に、浜の教員、次に泳ぐ生徒たちと「アイヨー(愛洋)」「ヨーイコーラ(養勇高礼)」と声をかけ合いました。
周回コースは泳ぐ側にとっては、潮目と逆になったり沖に流されそうになったりするので見た目よりきついと、体育科の先生やOB・OG達から聞いています。
23年度に着任し、臨海教室復活に向けて何度か海岸を訪れていましたが、皆さんと一緒に私も初めて臨海教室を経験しました。
沖と浜の集団の大きな掛け声が響きあう中、必死で泳ぐ一連の白帽子を見て、感無量でした。
本校の開校の翌年である大正12年から脈々と続いている臨海教室のバトンを再び繋ぐことができて安堵しました。
もう一つの思い出は、同年、平成24年9月に実施した本校創立90周年記念式典です。
記念式典では1年次生であった皆さんが、上級生と声を合わせた校歌の大合唱が体育館に響き渡りました。
式辞では、校歌3番の「文化の流れ西東 新たに結ぶ日本の 若き世代はわれらの肩に」とあるのは、生徒に社会貢献という使命を果たすことを願ったものであること等を話しました。
昨今、重視されている、広い視野をもつことやリーダーシップを発揮することは、本校においては府立六中創立当初からの不易の教えであり、綿々と引き継がれている志なのです。
今年のPTA卒業記念品はオルゴールで、校歌のメロディーということです。
校歌に託された思いを胸に刻み、卒業後も時おり口ずさんでくれたらと思います。
一方で、卒業生の皆さんは、朝陽祭、運動会といった学校行事での成果が著しかったという印象があります。
皆さんが2年次生のときの朝陽祭の劇は創造性に富んだクラスが多く、見応えがありました。
高い感性や芸術に対する素養は、皆さんが卒業後、進学したり社会人になったりした時、必ず必要な力です。
また、運動会では実行委員会が生徒全体をリードする体制を確立しました。
学校としても大きな前進でした。
学校行事と勉強との両立は、どれも苦しかったでしょうが、仲間と一緒に行事を成し遂げた経験は、これからの皆さんにとって大きな励みであり、かけがえのない思い出であると信じています。
さて、昨年はノーベル物理学賞が赤崎勇教授、天野浩教授、中村修二教授という日本の3人に贈られた記念すべき年でした。
赤崎氏と天野氏が青色の発光ダイオードを初めて作り、中村氏が実用化に繋げました。
スウェーデン王立科学アカデミーは今回の授賞発表文で、青色LEDは「人類に最大の恩恵をもたらした発明」と記し、最大級の賛辞を送っています。
3人についての記事を読むと、共通する点がいくつかありました。
その一つが「あきらめない精神」です。
赤崎教授は40年もの間、青色LEDの研究を続けてきました。
天野教授は材料となる窒化ガリウムの結晶化の実験で3000回失敗しましたが、あきらめずに研究を続けて大発見をしたとのことです。
また、中村教授はアメリカに渡る前の20年間、徳島の製造会社に勤務してひたむきに研究活動を行いました。
できるはずがないと思われていたことへの挑戦と粘り強い継続が、今回の受賞に繋がりました。
皆さんもぜひ、3人の方々の「あきらめない精神」から多くを学んで欲しいと思います。
ここで、赤崎教授が著書で引用している哲学者の三木清の言葉を紹介します。
「人生論ノート」の中の言葉です。
「人生においては何事も偶然である。
しかしまた人生においては何事も必然である。
」
皆さんの未来には無限の可能性が広がっています。
新宿高校から力強く、新しい一歩を踏み出してください。
結びに、本日ご多忙の中、ご臨席を賜りました、ご来賓の皆様、保護者の皆様に心よりお礼を申し上げ、式辞とさせていただきます。
(以上)
今年度の卒業生は、明るく創造力豊かで、学校行事を盛り上げてくれた生徒たちでした。
直木賞作家の朱川湊人氏による1年次の学年向け講演会では、自然体の人生論に胸打たれ、生徒と共に私も、自分の人生にしっかりと向き合うことの大切さを共有したことも懐かしい思い出です。
67回生が入学時、自校作成問題の文章素材として取り入れた朱川氏の「凍蝶」の情景が脳裏に蘇ります。
旅立ちの日、卒業生の皆さんに幸あれ、と祈りました。