人類の火星移住計画を進めているオランダの民間非営利団体「マーズ・ワン」は19日までに、計画の足がかりとなる火星への“片道旅行”の参加者について、約20万人の希望者から最終候補者100人を選んだと発表した。
希望者は一流の経歴を持つ科学者や技術者が目立つが、「火星で寿司屋を開業したい」というメキシコ在住の日本人女性シェフなど多種多彩。
いずれも火星で生涯を終えることを承知で移住に挑む真の挑戦者ばかりだ。
年内には、2024年から順次、火星に向かう24人が決まるが、いまの科学技術では人類は火星で68日間しか生存できないと警告する科学者もおり、今後、大きな苦難が待ち受ける。
火星寿司会 開催したい (^_^;)
男女半々、夫婦も無職も
マーズ・ワンの発表によると、100人の内訳は男性50人、女性50人でちょうど半々。年齢は19~60歳で、地域別では北米39人、欧州31人、アジア 16人、アフリカ7人、オセアニア7人など。16日付米紙ワシントン・ポスト(電子版)は職業別では学生13人、社会人81人、無職6人だが、夫婦で候補 者に選ばれた人もいると伝えた。
具体的には、原子力技術者兼海軍予備役という米国人男性、オスカー・マシューズさん(32)や、米女性政 治コンサルタントのソニア・ニコール・ヴァン・メーターさん(36)、米大学病院の女性救急救命医、レイラ・ローランド・ザッカーさん(46)ら、知力と 体力を兼ね備えた人が名前を連ねる。
米CNNテレビ(電子版)は18日、有力候補とみられる英国人2人の声を紹介した。
ひとりは英ロンドン在住のアリソン・リグビーさん(35)。高校の研究室で技術職を務める彼女は「1980年代以降、宇宙旅行は米国人のためのものだったから、(英国人の)私が行く機会があれば真っ先に名を残したいと思った」と応募動機を語った。
また「先駆者は常に笑いものになるが、私は多くの人のためになりたい」と述べ、「もちろん怖いし、母親は反対しているけど、なぜ火星に死にに行くのかと聞かれると『誰もがいつかは死ぬが、死ぬ前に何をするかが大切よ』と答えているわ」と胸を張った。
2人目のイングランド在住、クレア・ウィードンさん(27)は企業の管理職。宇宙に関する知識はないが、ごく普通の「9時から5時」の生活はしたくないとの理由で応募した。
「究極のチャンスよ。歴史に名を残し、人類の未来を変えたと言えるようになりたい」と訴える彼女は、今回の“片道旅行”が人類の将来の火星移住に不可欠な挑戦と信じている。
「友人や家族らみんなが喜んでくれた」というが、恋人だけが唯一、反対。しかし、「連絡は電子メールでできるから、恋が終わるわけじゃないわ」と訴えた。
唯一の日本人は女性シェフ
日本関係も2人いる。火星初のすし屋の開業をめざすメキシコ在住の日本人女性シェフ、シマブクロ・エツコさん(50)と日本在住の女性教師兼ライター、サブリナさん(36)だ。
マーズ・ワンは18歳以上を条件に13年、移住希望者を募集。火星から地球に戻る宇宙船の建造は技術的に不可能なため、片道旅行が前提にもかかわらず、全世界から20万2586人が応募した。
1次選考で1058人(107カ国)に減らし、これを660人、100人と絞ってきており、最終的に選ばれた24人は2024年から2年ごとに4人ずつ火星に旅立つ。
とはいえ、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者らからは、現在の科学技術では火星で人は68日しか生きられないといった指摘や、4人を送り込むのにかかる60億ドル(約7100億円)もの費用の調達方法など、難題が山積みだ。
上の写真は、火星に着陸する米宇宙ベンチャー、スペースXの宇宙船や居住施設の想像図。
オランダの民間非営利団体「マーズ・ワン」だけでなく、スペースXも地球から火星に8万人を移住させる計画を進めている。