牛丼「すき家」の社長は新宿高校OB

tinyReportsIMG_J20120817205104 牛丼チェーンの「すき家」を運営するゼンショーホールディングスは、2010年度の連結決算で日本マクドナルドホールディングスを抜く売上高3700億円余りを達成し、外食産業のトップに立った。10年間で20倍以上の急成長だ。

そのオーナー社長、小川賢太郎氏(66)は、「革命家」と呼ばれるほど異色の経歴で知られる。

1948年生まれの団塊世代で、1968年に都立新宿高校から東大に入学して全共闘運動に身を投じるが、安田講堂の“落城”で敗北を味わう。

その ときの身の振り方が他の学生と決定的に違った。

多くの学生が教室に戻り、就職したのに対し、大学を中退し、今度は港湾労働者を組織化すべく、荷役会社へと 潜り込んだ。

だが、そこでも挫折と幻滅を味わい、逆に資本主義の優位性を痛感する。

今度は、「資本主義体制の下で世界の飢餓と貧困を撲滅する」という大目標を立て、急成長中だった吉野家に入社した。1978年のことだ。これが今に至る道の始まりだ。

小川氏が入社した2年後(1980年)、吉野家は経営危機が表面化した。

小川氏は孤軍奮闘して自主再建を目指したが、会社は会社更生法の適用を申請。

「米、牛肉、醤油というシンプルな組み合わせの牛丼は必ずハンバーガー並みにポピュラーになる」と確信していた小川氏は3人の部下を引き連れて独立し、ゼンショーを設立した。1982年のことだ。

 

社名の「ゼンショー」は「全勝」という意味

そこには、敗北の連続だった小川氏の「これからは全戦全勝だ」との思いが込められている。

独立した小川氏は軍隊のような「鉄の規律」を導入した。

それを物語るのが、企業理念に加え、社員や店舗スタッフの動き方までこと細かく記した「ゼンショーグループ憲章」だ。

たとえば、カウンター席の客には、注文から原則10秒で牛丼を出す。

外食産業に詳しい経営コンサルタントによれば、これは「業界最速」だ。

「営業報告から掃除に至るまでやるべきことのタイムテーブルも秒刻み。時間管理の厳しさは本社の管理部門でも同様で、商談は30分以内、歩く時は1秒に2歩以上が求められる。外食産業の多くでマニュアル化が進んでいるが、ゼンショーは突出している」

ちなみに、社員には筋力トレーニングや朝礼時のスクワットが義務付けられていたこともある。

※週刊ポスト2014年4月25日号

 

「ブラック企業」というイメージから

いかにして脱却するか  (^_^;)

 

ゼンショーホールディングスは牛丼チェーン「すき家」従業員の過重労働等の問題などを指摘されたことを受け、約2000ある店舗のうち6割にあたる1259店舗の深夜営業を中止していたが、2015年6月末までに全店舗の深夜営業を再開させる。

従業員管理など労働環境の改善や、人手の確保にめどがついたことを理由にしているが、また過重労働やワンオペといった同じ過ちを繰り返すことになるのではないか、と首を傾げる人もいる。

 

「人手の確保にもめどがついた? 」

結局、「全店深夜営業復活」(画像はイメージ)
結局、「全店深夜営業復活」(画像はイメージ)

「すき家」従業員の労働条件は数年前から社会問題になっていて、24時間通しで働かされた、2週間家に帰れなかった、残業代が出ない、といっ た苦情があり、訴訟に発展するケースもあった。14年2月には過重労働に耐えられないと多くのアルバイトが仕事を辞めたため「パワーアップ工事中」などと いう看板を掲げ臨時休業する店舗が相次いだ。

このためゼンショーHDは労働環境を改善する第三者委員会を設立、14年7月に深夜に1人で働く「ワンオペ」勤務の早急な解消を求めた報告書が出た。この時点で「ワンオペ」店は940店舗あった。

創業者の小川賢太郎会長兼社長は記者会見を開き、

「働いているアルバイト、社員に過重な負担をさせた。本当に反省している」

などと謝罪、14年8月に深夜の「ワンオペ」廃止を発表したが、これによって24時間営業が基本だった「すき家」は深夜営業ができない状況に陥った。

ゼンショーHD広報によれば14年10月1日時点で深夜営業をしていない店舗は1254店舗にのぼる。当初の想定の3倍近い店舗数で、これが業績の低下を招くことになった。それから約9ヶ月後の15年6月末までにすべての店舗で深夜営業を再開しようというのだ。

「すき家」の関係者がコメントを書いているという掲示板2ちゃんねるの「すき家アルバイトスレ」ではこのニュースに驚きを隠せない人が多い。

「会社は本気なのか? とりあえず威勢のよい発表をしておかなければならない要因でもあるのかね?」
「調理工程の簡略化ができ、人手の確保にもめどがついた? 嘘ばっかりwww」
「新人なんか来ないんだから、深夜ワンオペ復活ととらえるべきだな」

などといった書き込みが並んでいる。

 

ゼンショー広報 「無理やりやれば元の木阿弥」

「すき家」の問題に深くかかわってきた若者のための労働組合「首都圏青年ユニオン」に聞いてみたところ、労働環境を改善するための第三者委員会ができてからゼンショーは真面目に問題クリアに取り組んできたことは認める、としたうえで、

「これまでの労働環境が悪すぎたため、今後も会社の方針を信じ、それを必至になって実現しようとする従業員がどれくらいいるの か、ということですね。ブラック企業とレッテルが付いて以降、新たに働くことに躊躇している、という点もあります。あまり拙速に事を運び過ぎれば1年後と かにまた最悪の状況になる、ということも考えられるわけです」

と厳しい。

ゼンショーHD広報によれば、深夜営業をしていない店舗は14年10月1日時点で1254店舗だったが、14年12月末で903店舗に減っ た。15年3月末までにこれを約500店舗とし、6月末までにすべての店舗を深夜営業させる目標を立てている、と語った。可能になったのはまず労働環境の 改善で、過重労働ができない仕組みを作ったという。明確な店舗責任者を置き、従業員のシフトを日々確認することで過重労働を未然に防ぐという。従業員確保 面では、14年6月に各地域への密着を狙いとした7つの店舗運営会社作ったことが効果を発揮し、地元で社員や従業員を募集し、人が集まるようになってき た。

「全店深夜営業復活というのはあくまで目標なんです。働いている従業員の声をきちんと聴き大切にし、店舗の実情を見ながら可能なものから進めていきます。無理やりやろうとすれば元の木阿弥になってしまいますから」

ゼンショーHD広報はこう話している。

 

SNSでもご購読できます。

コメントを残す