地球防衛未亡人

ent14020707160002-p1 東シナ海に浮かぶ三角諸島に宇宙怪獣ベムラスが出現する。

最愛の夫をベムラスに殺されている地球防衛軍のダン隊員(壇蜜)は復讐(ふくしゅう)に燃えるが、政府から攻撃命令が出ない。

なんとベムラスは使用済み核燃料を食べ始めたのだ。

「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」の河崎実監督が、またも風刺とずっこけ満載の怪獣映画に挑んだ。

低予算ながら、怪獣の造形といい、戦闘機の仕様 といい、特撮愛の強さは「パシフィック・リム」にも負けてはいない。

一度くらいまじめな特撮映画を撮ったらいいのに、とも思うが…。

8日、角川シネマ新宿 ほか全国順次公開。1時間24分。

 

これはスゴい (^_^;)

 

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主演映画「地球防衛未亡人」(河崎実監督)が8日から公開される。

タイトルだけでおおよそ察することができるが、コメディーというか…ズバリ言えば正統派“おバカ映画”だ。

だが、作品を見終わった後、「ホンマはこういうんが好きだったんやろ?」と、これも出演していた連続ドラマ「半沢直樹」の雰囲気ではないが、関西弁で言葉責めしたくなるできばえだ。

「作品をつくる上ではおバカ映画に徹することが義務でした。地球防衛軍と一見結びつかない未亡人が、ちゃんと物語になってしまうのが見どころでしょうか」

大ブレークのキッカケになった2012年の初主演映画「私の奴隷になりなさい」、翌13年の超ハードセクシー映画「甘い鞭」の、前2作とはあまりに毛色が違い過ぎる今回の作品。

よくぞ出演に踏み切ったものだ。

「昨年の春、まだ台本も企画書も上がってない状態で、新宿アルタ横の喫茶店で河崎監督から『元芸者で未亡人で夫の仇をうつ地球防衛軍のパイロットの役を!』と口説かれました。以前の事務所は目の前にあるものにはすべて飛びつく方針だったので」

images←脚本・監督・プロデューサーの河崎監督は「イカレスラー」「日本以外全部沈没」「ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発」など、B級カルト映画の巨匠。主演のご当人に映画の内容を解説してもらうと…。

「現実の未亡人には全くない、監督が空想した未亡人の姿を、そのまま地球防衛軍の『壇隊員』に投影した作品です」

壇蜜ファンとしては、凛々しい戦闘服姿やセーラー服、ウエディングドレス、芸者姿に喪服-と壇蜜コスプレ映画として楽しめる。

さらに、意味不明のサービスカットが随所にある。昨年末の紅白歌合戦でも披露してくれた日舞(師範である)シーンも重要なポイントだ。

「映画の芸者姿のメークは本職の方にやっていただいたんですけど…どうやら観光写真用のメークらしく、耐久時間があって。夏場の撮影でしたので汗で、もう」

そういうB級感も見どころのポイント。

毎回、取材では常にリップサービスをしてくれる。この1年で格段にキレイになったと伝えたら「あごを削って、全パーツ総取り換えしたので」とジョーク混じりの返答があった。

「実は…本当に西川史子先生の整形外科に通ってます。以前、メークさんにコンシーラー(部分的に塗って隠すファンデーション)では膝の傷が消しづらいって相談されて。今、傷消しに。グラビアビジネス的に気を使ってます」

ぶっちゃけ、CMにも多数出演して収入も相当なことになったでしょ?

「年収1億円って書かれましたね。じゃあ、その残りを下さいよ~って。でも、何をするのにもお金は必要なので今、ちょっと銭(ゼニ)貯めてます、アハハ」

貴金属も身に着けていないし、いまどきのタレントには珍しくネイルもしていない。

400_225「お金を使うのは…最近飼い始めたナマズ。あとはファンの皆さん、“うちのコたち”に個人的に何かお返しをしたいんですよ」

昨年は大飛躍したが、今後の展開は?

「責任を取りながら仕事をしたいです。向いてない、では片付けられない領域に入ってきたので、地に足を着けて仕事をやりたい」

大きな変化には家族も戸惑っているという。

「父は一番複雑だったでしょう。昨年末に父方の祖母が亡くなって、久しぶりに父と話すチャンスがあって。『誰が見ても多くの人がわかる存在になったことはうれしい』と言われました。本当に家族には負担をかけてます」

33歳になった。気になる恋愛だが、「今、恋愛している時間がなくて…。いつかできたらいいなあ、って妄想してます。今は、癒やしてくれるのは、ナマズとお風呂だけかな…」。

日本の男性は、ますますアナタに癒やされてます。(ペン・永瀬白虎 カメラ・矢島康弘)

 

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壇蜜 地球防衛軍スーツ着用しご満悦

2014年2月8日

「地球防衛未亡人」の初日舞台あいさつをした壇蜜=東京都新宿区新宿3、角川シネマ新宿(撮影・佐々木彰尚) 「地球防衛未亡人」の初日舞台あいさつをした壇蜜=東京都新宿区新宿3、角川シネマ新宿(撮影・佐々木彰尚)

タレント・壇蜜(33)が8日、都内で、主演映画「地球防衛未亡人」の公開初日舞台あいさつに登場し、今作で初共演した俳優・森次晃嗣(70)のハートを“制圧”した。

元芸者の未亡人で地球防衛軍のエースパイロットという主人公ダン隊員を演じた壇蜜は、ピチピチの防衛軍スーツ姿で登場。「ウルトラマンセブン」で主人公モ ロボシ・ダンを演じて人気を得た森次との共演に壇蜜は「ご一緒した時点ですごく緊張した。特撮は敷居が高いと思っていたので、敬意を持って撮影させていた だきました」と“リアル・ダン”に恐縮しきりだった。

一方、上司役で壇蜜にビンタをするシーンに挑んだ森次は「壇蜜さんに触れることを嫌う人はいるのかね」とご満悦。壇蜜の演技に関しても、「大変すばらしいと思いますよ。自分の考えを持っている。深くお付き合いしたことないので、わかりませんけどね」と絶賛していた。

壇蜜は今作が主演映画で初めて“お色気”を封印した作品となった。 初主演映画「私の奴隷になりなさい」(2012年)、主演第2作「甘い鞭」(13年)はともにR指定。壇蜜は「初めてR指定でもない映画になったのに、こ んな雪でねえ…」と愚痴りながらも、「タイトルがすでに子供向けじゃない。『お父さん、未亡人って何?』から始まる。早期教育としてはいいかな」と笑わせ ていた。

 

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cbmiboujin02 知性と痴性はよく似ている。まるで双子のようにそっくりだ。

進学祝いに辞書を買い与えられた中学生は、接吻、手淫、淫売、肉欲といった熟語を夢中 になって調べ始める。痴性を磨くことで知性がぐんぐん高まっていく。

そんな知性と痴性との狭間にポンッと花開いた名花が今をときめく壇蜜である。

壇蜜主演 最新作『地球防衛未亡人』は知性と痴性が、狂気と狂喜が、SMとSFがせめぎあう快感ファンタジーワールドとなっている。

『私の奴隷になりなさい』(12)『甘い鞭』(13)とSM映画に主演することで現代のセクシーアイコンとなった壇蜜をSF映画のヒロインに起用 したのは河崎実監督。

筒井康隆原作『日本以外全部沈没』(06)やベネチア映画祭に公式出品された『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』(08)など特撮パロディを撮り続けているバカ映画界の巨匠だ。

河崎監督の商業デビュー作『地球防衛少女イコちゃん』(87)は ロリ系美少女とSF要素を融合させたもので、萌えカルチャーの先駆的作品として知られる。

カリスマフードル・可愛手翔を主演にした学園コメディ『飛び出 せ!全裸学園』(95)は記録的セールスとなり、そのオープンマインドな発想はSODの全裸シリーズへと受け継がれた。

AKB48人気に便乗したガールズ ムービー『地球防衛ガールズP9』(11)は“ギミック映画の帝王”ウィリアム・キャッスルへのオマージュ作だった。

その時代を象徴するアイドルを起用し て、おかしな世界を作り上げ、壊してみせるのが河崎監督の流儀である。そして現代は熟女の時代。河崎ワールドに壇蜜が大人の女の色香を注入している。

o0480064012757316522『地球防衛未亡人』は、ラクウェル・ウェルチ主演『女ガンマン 復讐のメロディ』(71)、ユマ・サーマン主演『キル・ビル』(03、04)と同じく、復讐に燃える女の物語だ。今回の壇蜜はボンテージファッションでは なく、『ウルトラマン』の科学特捜隊を思わせるオレンジ色の隊員スーツをキリッと着こなす。地球防衛軍に中途採用されたダン隊員(壇蜜)にはかつて最愛の 婚約者がいた。向島で芸者をしていたダンだが、婚約者とは結婚式までは清い関係でいようと約束を交わしていた。そんな矢先、宇宙怪獣ベムラスが東京に現わ れ、婚約者はあっけなく踏み潰されてしまう。私の初夜を返して! 処女のまま未亡人となったダンは復讐を誓い、地球防衛軍に入隊。血の滲むような努力の末 にエースパイロットとなっていた。そしてヤツが再び現われた。ベムラスは日中間の領土問題で揺れる東シナ海の孤島に出現、さらに日本列島に上陸し、核廃棄 物が山積みされた原発へと迫る。ついにダン隊員が搭乗する最新戦闘機に出撃命令が下る。未亡人と怪獣との戦いの火ぶたが切って落とされた。

的確なミサイル攻撃で怪獣を追い詰めるダン隊員だったが、そんなとき彼女の体に異変が起きる。怪獣を攻撃する度にダンの全身をかつてない快感が貫 く。コクピット内でハァハァしてしまうダン。思わぬ醜態を晒してしまい、戦闘機はあえなく撃墜。

cbmiboujin03一命は取り留めたダンだったが、こっそり受けた精神科医 (モト冬樹)の分析結果にさらなるショックを受ける。「あなたは立派な変態です」。婚約者の仇を討つために地球防衛軍に入ったのに、そんな自分がただの変 態だったなんて。精神科医の投げ掛けた言葉がダンの脳内にエコーする。「あなたは変態です」「あなたは変態です」「あなたは変態です」。

ダン隊員が精神分析を受けるこのシーンは、三島由紀夫の小説『音楽』が元ネタだと河崎監督は語る。増村保造監督によって映画化もされている『音 楽』は、「音楽が聴こえない(音楽=エクスタシーの暗喩)」と訴えてきた美女を精神科医がカウンセリングを重ねることで「音楽が聴こえる」ようになるまで を描いた官能系ミステリー小説だ。社会風刺、未亡人、喪服、深層心理、三島文学……。壇蜜というセクシーアイコンを手に入れた河崎監督の痴性溢れる遊び心 がまんべんなく施されている。

振り返ってみれば、特撮の世界はフェチズムでいっぱいだ。『ウルトラマン』ではフジ隊員が巨人化(ジャイアンテス)し、子どもたちを妙な気分にさ せた。『ウルトラセブン』の人気ヒロイン・アンヌ隊員はサイズの小さい隊員スーツを着せられ、いつもムチムチ感を漂わせていた。そんなアンヌ隊員の個室に 忍び込んだペガッサ星人はアブない宇宙人だった。『仮面ライダー』に登場するショッカーの怪人・蜂女のおっぱいを見て、うずまきフェチに目覚めた男子も少 なくない。『仮面ライダーストロンガー』のミニスカ姿で戦う電波人間タックルの弱々しさには背徳感が満ちていた。SMの世界とSFワールドは人間の深層心 理の部分で深く太く繋がっていることが分かる。

精神分析の結果に落ち込み、呑んだくれていたダン隊員だったが、ある言葉に勇気づけられる。「変態だっていいじゃないか。だって人間だもの」。そ う、生きている人間は誰もが何かしらの変態なのだ。ただ自分の変態性に気づいていないか、気づいていないふりをしているだけ。世間の常識とは多数派の変態 たちの見解にすぎないことを『地球防衛未亡人』はやんわりと教えてくれる。変態であることを含めて自分のアイデンティティーを受け入れたダン隊員にとっ て、もはや怪獣は恐るべき存在ではなくなっていた。怪獣と、壇蜜と、そして三島由紀夫、みんなちがってみんないい。
(文=長野辰次)

 

■だん・みつ

タレント、女優。1980年12月3日生まれ、秋田県横手市出身。33歳。158センチ、B85・W60・H89。昭和女子大卒。

本紙(夕刊フジ)で月曜エッセー「壇 蜜のもっとハァハァしてる?」を連載中。

職場ゲームバラエティー「だんくぼ・彩(いろ)」(テレビ朝日系火曜深夜)などに出演。

初のフォトエッセー「はじ しらず」(朝日新聞出版)が発売中。

第37回日本アカデミー賞では、「甘い鞭」の演技で新人俳優賞に選ばれた。

 

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コメント

  1. ヤマザキ より:

    特撮ファン必見ですね。前作「ギララの逆襲」も傑作でした。

    1. KOSUGI より:

      さすが特撮分科会のコアメンバー
      過去の作品もちゃんと観てますね (^_^;)

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