新宿高校 校長 戸田 弘美 新宿折々
○12月8日(日)~11日(水)2年次生 修学旅行
2年次生の修学旅行に引率しました。広島、宮島、京都に3泊4日です。今年も例年通り2年次生は9月の文化祭で修学旅行の事前学習として、 広島に関する平和学習や宮島、京都等の歴史・文化に関する調査学習を展示・発表しました。その後も広島に関する平和学習として、DVD「ヒロシマナガサ キ」視聴や、原爆の歴史的背景に関する学習等を深めてきたうえで、修学旅行を迎えました。まず、修学旅行のしおり巻頭言として書いた文章を掲げます。
< 修学旅行巻頭言 > ノーモア ヒロシマ(No More Hiroshima)
来る広島修学旅行を想ったとき、私の胸にまず浮かんだ言葉が、この「ノーモアヒロシマ」でした。以前はよく耳にする言葉でしたが、最近は耳に することがほとんどなくなりました。ですから、皆さんにも知ってもらいたいと思って取り上げました。1945年8月6日の広島への原爆投下について、戦後 1948年に広島の被爆者に取材して当時の惨状をリポートしたアメリカ人記者が、記事の終わりに「広島」の悲劇を二度と繰り返すなという思いをこめて、こ の言葉を書いたところから、広く受け継がれたということです。風化させてはいけない言葉なのです。
皆さんは事前学習を通して多くのことを学びました。「ヒロシマナガサキ」というDVDを私も見ました。DVD (ここでは広島に限定して記す)は、原爆投下後の広島の映像と関係者の証言で構成されていました。広島で被爆し重傷を負ったり、家族を無くした日本人の 方々の証言と原爆直後の映像に、胸がつまりました。日本人として正対し、受け止めなければならない言葉と歴史的事実の連続でした。一方で、アメリカ人の 方々の証言は衝撃的でした。原爆投下についての様々な価値判断が述べられていました。ここでは原爆の製造と投下に関与した、一人のアメリカ人科学者の証言 を書き記しておきます。「そのころの私には、長い目で見て、これが地球の将来にどんな影響を与えるか、見通せる見識はなかった。」科学者の役割とは何なの か、と考えさせられます。当時の両国の歴史的背景、政治情勢についても、さらに興味関心を深めてください。先生方が大変良い教材を皆さんに見せてくれたと 思っています。皆さんの、自分自身の感性と判断基準を大切にしてください。その上で現地で、広島平和記念資料館等を見学した際、様々な資料を自分の目で見 て実感し、原爆、戦争について真剣に考えてくれることを願っています。
今回の修学旅行の訪問先は、平和学習以外にも宮島、京都等、日本の文化・歴史を理解する上で訪問したい名所が数多くあります。ここでも事前調 査を十分に積んだうえで、現地で多くを学び、楽しみましょう。特にグループ行動日には事故等の起きないよう、くれぐれも注意深く行動してください。体調管 理、交通安全、時間厳守等、生徒各自が自分のことはもちろん、仲間の生徒の様子にも互いに気配りをして、適切な集団行動をとりましょう。
結びに、広島平和記念公園の中心にある原爆慰霊碑に刻まれた碑文を記しておきます。
安らかに眠って下さい 過ちは 繰り返しませぬから
<修学旅行巻頭言は以上>
12月8日(日)、午前7時50分に東京駅新幹線ホームに集合し、修学旅行1日目が開始しました。2年次生310名、引率教員14名です。 12時に広島駅に到着して広島平和公園に直行し、広島平和記念資料館内ホールにて証言者の方の講話を拝聴しました。被爆時の広島の状況にとどまらず、証言 者の方の人生が講話から浮かび上がり、かけがえのない学習をさせていただきました。その後、生徒たちは、資料館と広島記念公園を熱心に見学していました。 資料館ではじっくりと説明を読みならが展示を見学し、原爆投下という壮絶な歴史的事実と真剣に向き合う生徒たちの姿が印象に残りました。それから、バスと フェリーで移動し、午後4時に宮島に着きました。厳島神社を見学した際、かろうじてまだ潮が引いておらず、美しい光景を見ることができました。事前に配布 された学年修学旅行通信で「世界遺産である厳島神社は、平清盛がもともと陸地だった場所に人工の湾を造成して建てた可能性が高く、海を寝殿造りの蓮の池に 見立てるという発想で、権威を誇示したかったのではないか」(広島大学院教授の研究・2006年読売新聞切抜き)という造成新説が紹介されているのを私も 読んでいたので、なおさら神社の風景が興味深く感じられました。その後、海岸に近いホテルに着きました。
12月9日(月)、2日目は、午前5時半起床。生徒は、事前に各自計画した班別体験行動を7地域ごとに行いました。先生方は地域に分かれて引 率、巡回を行いました。7地域は①宮島・広島②呉③尾道④しまなみ海道⑤倉敷・岡山⑥広島・姫路⑦姫路・神戸です。天気予報では一時、雨となっており、し まなみ海道はサイクリングコースを走ることになっていたので特に心配していましたが、急転して晴れになり、サイクリングは暑くて日に焼けてしまった、と後 の打ち合わせで報告があり、皆で喜びました。どのコースも事故なく進行し、午後6時、京都の宿舎に到着できました。各班の計画どおり、創意工夫のある充実 した体験が達成できました。
12月10日(火)、3日目、京都と周辺地域の班別活動を行いました。生徒は班毎に7地域①洛中②洛東③洛西④洛南⑤大阪⑥神戸⑦奈良に分か れて、事前に作成した計画に従って午前8時から午後5時半まで活動しました。少々、小雨がありましたが、ほとんど影響はありませんでした。この日は前日と 同宿舎に泊まりました。引き続き、集合時間を厳守することができ、規律が保たれました。
12月11日(水)、4日目は、クラス別に4種類のコースに分か れて体験学習し、京都駅に集合しました。4つのコースは①保津川下りと嵐山散策②京菓子作りと寺めぐり③座禅・法話④京扇子作りと寺めぐりでした。午後4 時の新幹線で京都を出発し、午後6時30分頃、東京駅に到着し、解散しました。本校としては沖縄修学旅行が数年続いており、着任3年目である私にとって本 校で初めての広島、京都修学旅行でした。広島の平和学習と、広範囲に及ぶ生徒の班別自主行動の、どちらも有意義な体験学習が達成でき、大きな成果がありま した。
「被爆を語り継ぐ会」証言者の方による講話 |
広島平和記念資料館 |
宮島 |
倉敷 |
姫路城 |
京都にて 扇子作り |
保津川下り |