「女三人よれば……」という少々失礼なことわざを引くまでもなく、古来、<女性は男性よりも多弁である>と言いならわされてきました。
ベテラン夫婦漫才、宮川大助・花子の得意ネタでも、映画や小説、演歌の世界でも、「男は寡黙、女は多弁」という設定が、当たり前のようにまかり通っています。
1日に女性が約2万語、男性は約7000語?
実のところ、「女性はおしゃべりである」という通説には、ある科学的な根拠があります。
2006年に米カリフォルニア大学の神経学者が発表したデータによると、米国に住む普通の男女が1日に話す語数は、女性が約2万語であるのに対し、男性は約7000語にとどまり、その差は実に3倍に達するということです。
統計の当否に疑問を投げかける声もありますが、この研究でも、おしゃべりをめぐる男女差の原因は解明されないままでありました。
「多弁」なオスの脳内に多い、あるタンパク質
ところがここに来て、ナゾを解く新たなヒントが示されました。
注目は、米神経科学の専門誌「ジャーナル・オブ・ニューロサイエンス」2013年2月20日号に掲載された米メリーランド大学の研究チームによる論文です。
メリーランド大の研究チームは、生後4日の幼いラットを母親から引き離し、オスとメスとが上げる鳴き声の回数を調べました。
すると、オスが母を求めて鳴く回数はメスの2倍にのぼり、ラットのオスは、メスよりも「多弁」だという結果が得られたのです。
さらに詳しく調べたところ、「多弁」だったオスの脳内には、「FOXP2」という遺伝子によって作られたタンパク質の量が、「寡黙」だったメスに比べて多く見つかり、その差は最大で2倍に達していたことが確認されました。
FOXP2遺伝子は、脳や肺の発達に必要な遺伝子で、「言語能力にも関係が深いのではないか」として研究者の間で注目されていますが、その機能はまだよく分かっていませんでした。
人間の男女間では…
さて、メリーランド大の研究チームは、ラットで得た発見をヒトでも確認することを目指し、事故で亡くなった4~5歳児の脳内を検査する追加的な研究も行いました。
その結果、女児の脳内で検出されたFOXP2タンパク質の量は、男児のものより約30%多いという事実を突き止めました。
検査数は少数にとどまっているため断定はできませんが、ここで初めて、「人間の男女間でも、FOXP2タンパク質の量が異なる」というデータが示された格好です。
さあ、ラットを使った先の実験結果とあわせると、どんな結論が得られるでしょう。
お分かりですね? <人間の女性は、多弁か寡黙かを決める『言語タンパク質』が脳内に多いため、男性に比べておしゃべりなのだ>と推論できるというのです。
――アメリカ発の最新研究によって、女子会がいつも盛り上がる理由の一つが、解明に一歩近づいたと言えるかも知れません。
話を聞かない男 地図が読めない女 (^_^;)