このお二人の著書は、今までに何冊か読んできたが、その対談というので大いに興味をそそられた
網野氏は1928年生まれで日本中世史が専門、阿部氏は1935年生まれでドイツ中世史が専門、ともにすでに鬼籍に入られている
どちらも日本の歴史学会の非主流といった立ち位置だったので、既存の学会への批判もあり、傷をなめ合うような場面もある
この対談は1982年なので、網野氏は54歳、阿部氏は47歳、学者として脂が乗り切ったところ
これから研究すべきテーマが次々に登場して、歴史学の将来への情熱が伝わって来る
ヨーロッパでは、11世紀前後からカトリック教会の影響力が深く浸透したために、人々の生活や意識が劇的に変化し、世界的に見て極めて特殊な社会になった
日本では、そのような劇的な変化を経ずに幕末まで来たが、明治維新でそのような特殊なヨーロッパ文化を「人類の普遍的文明」として受容したために、逆に日本文化の特殊性が際立って意識されるようになった
その辺の事情を、中世に遡って明らかにしましょう、ということのようです
網野氏は「無縁」、阿部氏は「贈与」という概念を中心に、中世史を分析する
例えば、人々が集まって飲み食いする宴会が、過去数百年の歴史の中でどのように変化してきたか、その変化の要因は何か
現在の我々の生活習慣やものの考え方の中にも、古代や中世の影響が脈々と流れているようです
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