マーラー交響曲第9番の最終章は死すべき運命のスローな反芻であり、弦楽器のみで演奏される静かなセクションからなる。
10日夜のニューヨーク・フィルハーモニックの演奏はアイフォーンに中断された。
エイブリー・フィッシャー・ホールの最前列から聞こえてきた耳障りな携帯電話の音――木槌製楽器を模倣した携帯電話の「マリンバ」の音――が楽章の途中で邪魔をした。
エイブリー・フィッシャー・ホール
徳永慶子さんのいるジュリアード音楽院のすぐ近く
指揮者のアラン・ギルバート氏
電話の音は直ちに消されず、観客は迷惑そうに頭を振った。音はなり続け、指揮者のアラン・ギルバート氏は左側を振り向き、不快感を露わにした。
数分が経過。静かなセクションに達するたびに、物静かで敬けんな楽器の音を上回り、携帯電話が鳴り響いた。
ついにギルバート氏は業を煮やし、オーケストラを制止した。
フィルハーモニックの広報担当者は11日、ギルバート氏はそれまで、携帯電話音や他のどのような種類の障害でも演奏を停止したことはなかったと述べた。
不愉快な騒音が繰り返し続くなか、ギルバート氏はその音のする方向を向いて、携帯電話をオフにするようきっぱりと求めた。
携帯電話の音――アラームだったとみられる――は、それでも鳴り続いた。
観客も不快に感じていた。たまたま19列目に座っていたウォール・ストリート・ジャーナルの記者には、バルコニー席からのヤジが耳に入った。
ある男性は「いい加減にしろ」と怒鳴り、もう一人は「つまみだせ」と叫んだ。観客も同意のしるしに拍手したり大声を上げた。
こうした騒ぎのなかでも、携帯電話の音は鳴り続けた。
ギルバート氏はその翌日、ウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで、交響曲の「最も情熱的で最も雄大で最も感極まる箇所」で、電話の音により、恍惚状態から引き戻された感じだったと話した。
「感情的にも精神的にも夢の彼方に到達している部分だ。ある意味でショックだった」と語った。
もっと意外なことに、オーケストラのメンバーが定期会員と認識できた電話の持ち主である張本人は直ちに非を認めたり、音を消したりしなかった、と同氏は述べた。
ギルバート氏は、「何度も何度もお願いしなければならかった」と言い、「奇妙だった。持ち主は恥ずかしすぎて、まひしてしまったのかもしれない」と続けた。
ギルバート氏はこの男性の名前を知らないが、オーケストラの顧客関連部署が男性に電話をしてもっと早く行動を取らなかった理由について尋ねる計画だという。
フィルハーモニックの関係者は、この定期会員の名前を明かすことは避けた。
指揮者のギルバート氏自身が呼びかけた後、男性はポケットに手を突っ込み、携帯電話の音を消した。ギルバート氏はこの男性に、「オフになったか、また鳴り出したりしないか」と念を押した。
男性はうなずいた。
ギルバート氏は満足して観客のほうを見た。同氏は、通常は邪魔は無視するのが最善の策だと語った。というのも反応すればその方がかえって邪魔になるからだと話した。ギルバート氏は観客に謝罪を込め、「あまりにも甚だしくて無視できなかった」と語った。
観客からは拍手が鳴り響いた。
ギルバート氏はさらに快活に、「もう一度やりましょう」と述べた。
ギルバート氏はオーケストラの方を向き、相図をして、力強いフォルティッシモのセクションから再開した。マーラー交響曲第9番は最後の物静かな音符に到達し、ギルバート氏は腕を止め、演奏者たちは動きを止めて長い絶妙な沈黙が広がった。
観客は息を止めて聞き入った。
(^_^;) コンサートの携帯音事情、日本よりアメリカの方がひどいのかな?
エイブリー・フィッシャー・ホール、卒業式の思い出の場所だったのですね。5月8日のコンサート応援ツアーの皆さんには、アタッカカルテットの特製トートバッグを下げて、リンカーンセンターの中を闊歩して欲しいです(^_^;)
こういうニュースが世界的に配信されるというのもニューヨークならではのことでしょうか。このホールはジュリアードの卒業式が行われるホールでもあり、2004,2005年に学部と大学院の卒業式に二回行ったことがあります。この地図で青いサークルのついているアリスタリーホールは今年の5月8日にアタッカカルテットがコンサートを予定しています。日本からも応援ツアーを企画して準備中です。すでに5名が参加の希望を表明されています。