チョコレートは脳卒中に対し予防効果があるらしい.
本当かしら?と思ってしまう話題だが,実 は前向き試験が4報あり,うち2報において統計学的に有意な予防効果を持つと結論されている.
その報告の一つがスウェーデンのカロリンスカ研究所から昨年 報告された女性を対象にした論文である.
毎週適量のチョコレートを食べると脳卒中の発症リスクが減少するという報告である.
Chocolate Consumption and Risk of Stroke in Women
J Am Coll Cardiol. 2011;58(17):1828-1829.
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同じ研究チームが,男性におけるチョコレートの摂取量と脳梗塞発症リスクを検討し,さらに既報の前向き試験についてもメタ解析を行ったのが本研究である.
さて方法はスウェーデン人男性37,103名(49~75歳)を対象とした前方視的研究である.
チョコレート消費量は開始時に,詳細な食品摂取調査票を用 いて調べた.
脳梗塞発症のデータはSwedish Hospital Discharge Registryを用いて得た.
メタ解析は2012年1月までの関連する研究をPubMedおよびEMBASEデータベースを用いて検索し,データの結合 はランダム効果モデルを用いて行なった.
さて結果であるが,10.2年の観察期間において,1,995例の脳卒中の初発を認めた.
内訳は脳梗塞1,511例,脳出血321 例,詳細不明が163例であった.
チョコレート消費が多いほど,脳卒中リスクは低かった.
相対危険度では,消費量の最も多い四分位(中央値 62.9 g/week;およそ1/3カップのチョコレートチップ)は最も少ない四分位(中央値 0 g/week;すなわち食べない)と比較し,0.83(95% CI 0.70–0.99)であった.
すなわち17%の危険率の減少がみられ,10万人・年で12人の脳卒中の発症が減るという計算になる.
また脳卒中の種類に は関わらず危険率の減少が見られた.
既報4研究に本研究を合わせた5つの研究のメタ解析では,合計4,260例の脳卒中が含まれ,全体の相対危険度は,チョコレート摂取の最も多い群と食べな い群を比較すると0.81(95% CI 0.73–0.90),すなわち19%の減少であった.
以上より,チョコレート消費は脳卒中リスクを下げるものと結論付けられた.
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なぜチョコレートが脳卒中予防効果を持つのか?
著者らはチョコレートに含まれるフラボノイドに関連 があるのではないかと推測している.
フラボノイドは,クマル酸CoAとマロニルCoAが重合してできる植物に広く含まれる色素成分の総称で,ポリフェノー ルの一つである.
チョコレートやココア,緑茶,紅茶,ワインに含まれる.抗酸化作用,抗血小板作用,抗炎症作用を持つと言われている.
さらに血圧も下 げ,LDLコレステロール値の低下や酸化抑制作用もあるそうで,脳血管にも保護的に作用するのだろう.
実は先行研究でダークチョコレート(ミルクが入らないカカオマスを40~60%含むもの)には心血管病の予防に有効であることが知られていたが,興味深い ことに今回摂取されていたチョコレートの90%はミルクチョコレートだった!
ミルクチョコレートは砂糖と脂肪を多く含む高カロリー食品で,肥満など他の脳 卒中のリスク要因の原因となる.
本研究でチョコレートの種類まで調べていないのは残念だが,当然食べ過ぎは好ましくなく,理論的にはダークチョコレートを 選ぶことが良いのだろう.
そして面白いのは5つの既報のうち3報告がスウェーデンからのものであるという点だ(残りはアメリカとドイツ).
ネットで調べるとスウェーデンの人々はどうもチョコレートが大好きらしい.
きっと著者もチョコレート好きに違いない!?
Chocolate consumption and risk of stroke ― A prospective cohort of men and meta-analysis―
Neurology. 2012 Aug 29. [Epub ahead of print]
出典:http://blog.goo.ne.jp/pkcdelta/e/c1e9828bd40f827cef90bdf556cd3b45
チョコレートを食べて 長生きしよー! (^_^;)