ホンダの創業者、本田宗一郎は65歳で引退した
この引退にもいろいろドラマがあるのだが、それは置いて、引退後のエピソード
本田宗一郎は「仕事一筋」で生きてきた人なので、引退して家にいてもすることが無い
まだ65歳だから元気はある
人に勧められて、世間でいわゆる「趣味」と呼ばれるものをいろいろ始めてみたのだが、どれもイマイチ退屈で飽きてしまい困ったそうだ
逸話として聴いた(読んだ)話なので、どこまで事実なのか、困ってからどうしたのか、その辺の詳しいことは知らない
ただ本田宗一郎にとって、
「仕事一筋」(新しいものを創造する楽しさ)
の世界は、
「趣味」(出来上がった作品を味わう楽しさ)
の世界に比べると、次元が異なるほど底抜けに楽しかったのではないかと思う
趣味にも創造的な要素はあるが、やはり仕事のそれとは次元が違うのだろう
仕事からそのような底抜けの楽しさを感じ取れる人は、おそらく少数派だ
だが優秀なエンジニア、ビジネスマン、創業者、研究者、芸術家などには、そんな人が少なくないように思われる
仕事を通じて自分で何かを創り出し、それを見たり感じ取ったり出来る人は幸せだ
工場の流れ作業のような単純作業がツライのは、それを感じ取ることが難しいからだ
* * * * * * *
文豪の永井荷風(→)は「人生に三楽あり」と言った
読書と酒と女だそうだ
彼はかなり自分勝手な人間で、他人の都合など構わず、人生の楽しみを味わい尽くしたような感じの人だ
そんな人の言葉なので、それなりに真実味がある
だが荷風が本当に楽しかったのは、文章を書くことだったと思う
読書と酒と女というのは、その合間の、やや息抜きのような楽しみ
どんなに楽しいことでも、そればかりずっと続けていると集中力が持たなくなったり、一時的に飽きてきたりするので、息抜きというのは必要だ
私は、人生の知的な楽しみには2種類あると思っている
創楽(そうらく):自分で何かを創り出す楽しみ
受楽(じゅらく):他人が創り出したものを味わう楽しみ
創造には苦しみの側面もあると思うが、それでも創楽の真髄に触れると、受楽など詰まらなく感じて、せいぜい息抜き程度になるのかもしれない
天才は創楽を味わう、と言うより、創楽を味わって「仕事一筋」に生きたから、結果として世間から「天才」と呼ばれるようになったようにも思える
「仕事一筋」などと聞くと、世間の平凡な人は「無趣味の詰まらない人間」をイメージすることが多いだろうし、確かにそんな人間もいると思う
だが実は「仕事一筋」の人の中に、「人生の本当の楽しみを味わい尽くしている人」がいるのではあるまいか?
何かに挑戦して失敗した人を見て、批判したりあざ笑ったりする人がいるが、そんなあざ笑う人こそ「人生の本当の楽しみ」から最も遠いところにいるように思える
(^_^;)
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