映画「大番」

昨日8/1、暑いのでエアコン部屋に引きこもって、

映画大番全4部作

一気に鑑賞しました

1青春編 2時間  2風雲編 2時間

3怒涛編 1時間50分  4完結編 1時間45分

合計7時間半、まったく退屈させない面白さ、特に青春編がいい!

成り上がりサクセスストーリーの名作映画

獅子文六の原作小説は、1956年から1958年まで『週刊朝日』で連載

昭和の日本橋、兜町(かぶとちょう)、現在の証券会社がまだ「株屋」と呼ばれていたころ、株取引が電子化される前の、まだ「場立ち」がいたころのお話です

魚とか野菜の卸売市場で今でもやってる「せり」を、株の世界でもやっていた

江戸時代の大阪堂島コメ取引所では、世界で最初の先物取引(デリバティブを行っていたほど、江戸時代の日本の一部では、すでに資本主義経済が高度に発達していた

それで、明治維新以降の産業革命がスムーズに進みました

多くの宗教が労働よりも信仰を優先している中で、「働くことは善」という社会的価値観が確立していたのは、地球上では西欧プロテスタンティズム(カルヴァニズム)と日本の江戸時代の価値観だけのようです

これは現在の先進国とほぼ一致しています

イスラム教では、労働よりも「お祈り」が優先ですから、日本に働きに来ているムスリムたちも、仕事時間中だろうが何だろうが、メッカに向かって毎日5回の礼拝を欠かしません

これでは心の平安は得られても、資本主義の競争経済の中では決定的にマイナス

実は現在でも、地球上の人類の多くは、「労働は悪」とまでは言わないまでも、

労働(仕事)は、信仰(宗教)よりも、ずっと価値の低いもの

という価値観の世界に生きています

昭和前半の日本は、今よりずっと厳しい格差社会だった訳ですが、本作ではそれをリアルにしかも明るく描いています

青春編で主人公の子供の頃の生活は、明るい雰囲気ながらも極貧の極みで、コメの飯が食えず、毎日イモを煮て食っていたような世界

戦前の日本の田舎は、ほとんど江戸時代!

若衆宿とか夜這いとか、今は消えた江戸時代の古き良き風習がリアルに登場する

そんな中で育った素朴な主人公が、18歳で東京に出て来て何も知らずに「株屋」に仕事を見つけ、雑用係の丁稚奉公(でっちぼうこう)からスタート

持ち前の明るい性格と必死の努力で成功の階段を駆け上がり、後半は森繁の社長シリーズみたいになって、豪邸を立てたりゴルフ場を開発したり

かつて「貧乏人の小せがれ」などと馬鹿にしていた村の有力者たちが、急に態度を変えて主人公を「名士」扱いし始める

まさに「故郷に錦を飾る」なんですけど、これが明治から昭和にかけての東京における、地方出身者(田舎者)の大きな目標であり、モチベーション(「今に見ていろ!」という雑草バイタリティ)になっていたのだろうと思われます

現在の日本ではそんな活力は徐々に失われ、日本経済は長期停滞

平等とか福祉とかって悪いものではありませんが、人間を弱体化させるという負の側面があることは間違いなさそう

主役の加藤大介は、脇役なのに存在感があるなぁと昔から思っていたんですが、やっぱり堂々と主役を張れる大スターだったんですね

元歌舞伎役者 女優澤村貞子の弟

本当は歌舞伎の家系で、エートコのボンボンなんですけど、「貧乏人の小せがれ」を見事に演じている

黒沢映画の常連で、「七人の侍」にも出演、強烈な個性と演技力がある

1911年生まれで、本作撮影の1956年ころには45歳だから、主人公の若いころ(10~20代)の場面では少し無理がありますね

酒を飲む場面が多いが、本人は下戸、でも本当に大酒飲みっぽい演技をしている

この映画を見ていると、人間という生き物の持つ柔軟性(環境適応性)というのは、底知れぬものがあるなぁと感じます

相手役の淡島千景が、若くてキレイで超カワイイ

本作撮影は私が生まれた頃で、彼女は私より32歳も年上ですから、私が子供のころ彼女はすでに女優の盛りを過ぎていました

本作は彼女の最盛期の映画で、当然ですけど女優の最盛期というのは素晴らしいものです

宝塚出身で、演技力も素晴らしく、令嬢役の原節子よりずっといい

撮影時32歳くらいで、映画の中では23歳くらいからの役を演じてますが、加藤大介(45歳が10~20代を演じる)のような無理感は無い

永井荷風の愛人「おうた」さんもそうなんだけど、金持ちの男と付き合う女性はたいてい、「お店を出したい」とか何とか言って男に出資を募るようです(今でもそうかな?)

主人公が株の世界で激しく戦っている背後では、彼を取り巻く女性たちが激しい「女の戦い」を繰り広げる

仲代達矢が脇役で出ていて、まだ若かったころとはいえ、脇役にはもったいないほどの存在感。ややミスキャストの感アリ

いろいろあって、最後に再起を目指すところは、「風と共に去りぬ」の最後みたい

私は昭和史について、2・26事件とか真珠湾攻撃とかの、表面的な政治史の背後にある、庶民の生活史に興味があります

それで、永井荷風「断腸亭日乗」や、林芙美子「放浪記」を通じて、庶民の昭和生活史のリアルな姿を感じ取ってきたのですが、この映画もその一翼を担ってくれそうです

なお、当ブログ記事をご覧になって、映画「大番」を観たいと感じたらご連絡ください。映画「大番」のmp4動画ファイル(全4本)を提供します。白黒ですけど、画質はそんなに悪くない

(^_^;)~♪

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