新宿高校1999年度卒
夏の高校野球の季節がやってくる。
東京都立新宿高校の硬式野球部は、部のOBが監督として指導するのが伝統だった。
現都立小山台高野球部助監督の田久保 裕之さん(34)=1999年度卒=は、新宿高を卒業後、すぐに母校の学生監督に就任し6年務め、教員になった後の小山台高では、同校を都立初のセンバツ 出場に導いた。
高校時代を「毎日がドラマだった」と振り返る熱血先生の田久保さんに、9年にわたった新宿高生活を聞いた。
野球は5歳の頃、阪神ファンの父と1歳上の兄の影響で始めました。
公立中学野球部だった1年生の時に、顧問の先生に「野球も勉強も頑張れるところ」と勧 められ、新宿に入学しました。
野球部でのポジションは1番ライトで、部長。仲間に恵まれ、チームワークも抜群で、3年の春と夏はシード校でした。
3年春の都大会4回戦で強豪の早稲田実業とあたり、七回に一塁からホームインする際、クロスプレーで左足が肉離れした。そのまま足を引きずり守備につきましたが、すぐに交代。チームは逆転サヨナラで負けました。
夏の大会はテープをぐるぐる巻きの状態で出場。3試合ノーヒットで終わり、満足にプレーできず、仲間に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
今思えば甲子園を十分狙えるチームでしたが、当時はただがむしゃらで、どこかに「甲子園は遠い」という諦めもありました。
卒業後は「こんな楽しい高校生活が3年間ではもったいない。ドラマの続きを見たい」と、高校の教員を目指しました。
日本体育大入学後、すぐ母校の監督に なりました。大学4年間は朝、跳び起きて母校の朝練行って、大学へ行って、放課後また母校で練習して、という生活でした。
卒業後は都立高の非常勤講師をしながら監督を続け、6年目の1月、教員採用試験を控え、選手に夏の大会で引退すると伝えました。
その初戦の対戦相手に、 キャプテンの森田慎くんが長年のライバル校の都立戸山高(新宿区)を引き当てた。しかも開幕戦です。
森田くんは「田久保さん、いい(引退の)舞台を用意し ましたよ」とニヤッと笑った。
試合は「新宿ダービー」として盛り上がりました。
ほぼ満員の神宮球場で、結果は七回コールド勝ち。それが監督として夏の大会 初勝利でした。
ちょうど翌日は朝から教員採用試験で、大忙しでした。その大会では3回戦まで進みました。最後の夏に後輩たちからすごいプレゼントをもらい ました。
翌年、念願の教員になり、2010年から小山台高に赴任。硬式野球部の助監督になりました。
チームは14年春のセンバツに21世紀枠で出場しました。結 果は1回戦敗退。期待に応える試合ができず悔しかったですが、やはり甲子園はすばらしく、敗戦から得たものも大きかったです。
監督の魅力は、教室や机上の勉強だけでは見えない、生徒の土壇場の底力を見られることです。
自分の高校時代の後悔から、生徒には「甲子園に行きたい」ではなく「行くんだ」と思わせることがスタートラインだと肝に銘じています。
私には夢があります。いつか、母校に戻るチャンスがあったら、監督として甲子園に導きたい。
地元の伊勢丹、高島屋、小田急百貨店、京王百貨店に「新宿高 出場おめでとう」の垂れ幕がかかり、地元の方が喜び、全国の皆さんに新宿高を知ってもらえれば−−。
そのために今は修行中です。
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19〜74歳のOB 現役より先に「甲子園」
戦前の旧制六中時代に創部され、終戦直後には都大会決勝まで進んだこともある新宿高硬式野球部。2008年には田久保さんも参加するOBチーム「マスターズ新宿」が誕生し、現役より一足先に甲子園出場を果たしている。
チームは硬式野球部OB会「朝陽白球会」の、20歳から79歳の約100人が選手登録。月1回ほど企業のグラウンドなどを借りて活動している。
「マスターズ甲子園」は、元高校球児たちが世代を超えて出身校別にチームを結成し、地区予選を経て甲子園の舞台に立つ大会だ。
09年、チームは都予選を 勝ち抜き、現役チームが手にしたことのない甲子園切符をつかんだ。
翌年11月の試合当日、徳島・鳴門高との対戦では、代打や細かい守備交代で、参加した 19歳から74歳の50人全員が試合に出場。
試合には負けたが、アルプススタンドでは駆けつけた同窓会メンバーが大いに盛り上がった。
OBの宮崎直道さん(62)=1971年度卒=は、「長年の夢がかない、最高の気分でした」と振り返る。
現在、チームは2度目の出場を目指し、練習に励 む。
一方で、過去にはマスターズの甲子園出場に発奮した現役チームが後に甲子園初出場を果たした例もあり、先輩たちは現役生の奮起にも期待を寄せる。
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卒業生「私の思い出」募集
都立新宿高校(旧府立六中含む)の卒業生のみなさんから「私の思い出」を募集します。
300字程度で、学校生活や恩師、友人との思い出、またその後の人 生に与えた影響などをお書きください。
卒業年度、氏名、年齢、職業、住所、電話番号、あればメールアドレスを明記のうえ、〒100−8051、毎日新聞地 方部首都圏版「母校」係(住所不要)へ。
メールの場合はshuto@mainichi.co.jpへ。
いただいた「思い出」は、毎日新聞やニュースサイト で紹介することがあります。
新聞掲載の場合は記念品を差し上げます。
ツイッター @mainichi_shuto
フェイスブック 毎日新聞 首都圏版
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たくぼ・ひろゆき
1981年東京都生まれ。
日本体育大体育学部卒業。2006年都立園芸高、10年同小山台高定時制課程教諭。
都立園芸高では部員9人の軟式野球部監督、 小山台高では硬式野球部助監督。
12年から、野球指導に関わる若手教員のレベルアップを目的に、「東京高校ベースボール若手会」(通称TKB)を主催し、 定期的に勉強会を開催している。