約1万年前に中東で家畜化されたとされる「イエネコ」が、世界各地に移動した経路などを、ネコのゲノム(全遺伝情報)に残るウイルスの痕跡から追跡することに成功したと、京都大ウイルス研究所の宮沢孝幸准教授らが発表した。
論文は2日の科学誌サイエンティフィック・リポーツ電子版に掲載された。
現在、世界各地に生息し、約100種類の品種が存在するイエネ コの祖先は中東のリビアヤマネコとされ、穀物をネズミから守るため飼われるようになったと考えられている。
その後、人の移動に伴いペットとして欧州や北米 などへ広がったと考えられていたが、どのように移動し、多くの品種に分かれたのかなど詳細はわからなかった。
宮沢准教授らは、イエネコの生殖細胞に感染したRD144とい うウイルスが、ゲノムの一部として子孫へと受け継がれ、同じ染色体に痕跡が残ることに着目。
このウイルスは数種類あり、そのうちの一つが、北欧のヨーロピ アンショートヘアと、英国のブリティッシュショートヘア、北米のアメリカンショートヘア、アメリカンカールというイエネコに共通して感染していた痕跡が見 つかった。
史実では、ヨーロピアンショートヘアが英国に移った後、 1620年にメイフラワー号に乗せられて北米大陸へ渡り、アメリカンショートヘア、アメリカンカールがつくられたとされている。
宮沢准教授は、ウイルスの 痕跡と史実が一致したとし、「ウイルスは、外見だけではわかりにくいイエネコのルーツなどを調べる指標になる」と話す。
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